スタッフ
監督:アナトール・リトヴァク
製作:ロバート・バスラ─、アナトール・リトヴァク
脚本:フランク・パートス、ミレン・ブランド
撮影:レオ・トーヴァー
音楽:アルフレッド・ニューマン
キャスト
ヴァージニア / オリヴィア・デ・ハヴィランド
カニンガム / マーク・スティーヴンス
キック医師 / レオ・ゲン
グレース / セレステ・ホルム
ゴードン / リーフ・エリクソン
テリー医師 / グレン・ランガン
ディヴィス婦長 / ヘレン・クレイグ
グリア夫人 / ポーラ・ボンディ
ヘスター / ベッツィー・ブレア
日本公開: 1950年
製作国: 20世紀フォックス ダリル・F・ザナック作品
配給: セントラル
あらすじとコメント
アナトール・リトヴァク監督作品で続ける。精神病院に入った女性の混乱と彼女を取り巻く人間たちをサスペンス・タッチで描くドラマ。
アメリカ、シカゴ
出版社勤務のカニンガム(マーク・スティーヴンス)は作家志望のヴァージニア(オリヴィア・デ・ハヴィランド)と知り合い交際を始めた。しかし数か月後、突如として彼の前から姿を消してしまうヴァージニア。
半年後、ニュー・ヨークのホテルに転職したカニンガムは互いが好きだったクラシックのコンサート会場で偶然彼女と再会。今度こそと思う彼だったが、妙にヴァージニアの様子がおかしいことに気付く。過去の記憶が欠落していたり、妙に情緒不安定になるのだ。
二人して病院に行き、結果、神経衰弱の診断が下りて精神病院に入所することになり・・・
実話を基にした女性の精神的葛藤を描くドラマ。
映画は冒頭、精神病院にいるヒロインの奇妙な言動からスタートする。紳士的で優しい主治医が治療に当たっているのだが、ヒロイン自体が自分が何故ここにいるのか不思議とか、何かの拍子で錯乱状態に陥る姿を描いていく。
面会に来た夫さへ記憶になく、結婚の事実も理解できない。
そこから遡って夫と知り合い行方不明になったりと紆余曲折が描かれる。
作劇はヒロインが軟禁状態ではないかとか、逆に何故精神的に追い詰められているのかとミステリー・タッチで描かれていく。しかも収容先は女性専門の精神病院らしく、様々な患者がおり誰もが気色悪い程の名演で更に恐怖感を募らせてくる。
進行としては追い詰められ最終的に発狂してしまうのではないかという表現なのであるが、これは女流作家の自伝でもある。
つまり、サスペンス・スリラーの態で進行するが実は彼女の精神薄弱の源を探る医師や心優しい亭主による完治への誘導劇である。更にヒロイン自体が作家でもあるので、自己分析ゆえの独白部分もあり、逆に情緒不安定から来る錯乱と猜疑心も包み隠さず登場させているので、それらがトータル的にサスペンス映画という印象を与えてくる。
それでも入院患者も追従型、猜疑心型、暴力型など様々いる。そしてキャパ以上の精神病患者で看護師たちもきつく当たったり、機械的対応しかできない人間もいるのだ。
しかも患者はレベルによって入院病棟が分けられ、ヒロインも退院に向けて軽症病棟に移動したりするが周囲や無神経な別な医師の対応で悪化し、再度錯乱状態に退行してしまったりと一進一退の態で進行していく。
その根本状態がどこから来ているのかを探るのが主治医で、最終的に根本原因を突き止めるから光明が差す結末と相成る訳だが、時代性もあるから致し方ないが、ショック療法やら無神経な病院上層部に疲弊した看護師といった表現に首を傾げる場面もかなりある。
サスペンス・スリラーの態で進行しラストはヒューマンタッチで良かったね的変調は、どこかから圧力を受けての変更なのかと思わせる珍妙な印象を受けてしまった。