スタッフ
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:ウィリアム・ワイラー
脚本:ジョン・マイケル・ヘイズ
撮影:フランツ・プラナー
音楽:アレックス・ノース
キャスト
カレン / オードリー・ヘップバーン
マーサ / シャーリー・マクレーン
カーディン / ジェームス・ガーナー
リリー / ミリアム・ホプキンス
アメリア / フェイ・ベインター
ロザリー / ヴェロニカ・カートライト
メアリー / カレン・バルキン
イヴリン / ミミ・ギブソン
アガサ / ホープ・サマーズ
日本公開: 1962年
製作国: アメリカ ミリッシュ・カンパニー作品
配給: ユナイト
あらすじとコメント
「ジュリア」(1977)の主人公リリアン・ヘルマンは実在の劇作家であった。そのヘルマンが書いた戯曲を映画化した作品。女性たちの闇を、当時としては斬新に映画化した佳作。
アメリカ、カリフォルニア17歳からずっと一緒で親友のカレン(オードリー・ヘップバーン)とマーサ(シャーリー・マクレーン)は、二人で寄宿制の女子小学校を経営していた。
そこで学んでいるのは地元名士の子女ばかりで、マーサの叔母で元女優のリリー(ミリアム・ホプキンス)が、教師として手伝っていた。ところが、このリリーは身勝手で下品なタイプ。だが、問題は彼女だけでなく生徒のメアリーも平気で嘘をつく、あざとい女の子である。
それでも懸命に頑張るカレンとマーサだったが、カレンが恋人の医師カーディン(ジェームス・ガーナー)と結婚を決め・・・
あざとい少女の嘘から人間たちのエゴが焙りだされるドラマの佳作。
園長から寄宿生まで女性だけの閉鎖的空間。そこには年齢に関係なく個人のエゴが蔓延している。
一人が結婚を決めたことから、親友である他方が嫉妬しているという噂を発生させるもう一人の教師。それを曲解して、更に噂を流す「構ってちゃん」少女。
しかも、偶然が重なり少女の祖母が信用してしまい、益々、噂が拡がり、全生徒が反抗してしまう騒ぎに発展していく。
いかにも戯曲らしい閉鎖空間で繰り広げられる心理サスペンス劇。
ベースにあるのは『同性愛』である。リリアン・ヘルマンによって戯曲が書かれたのは1934年であるので、かなり斬新というかタブーのジャンル。
しかも、本作と同じくウィリアム・ワイラーによって「この三人」(1936)として映画化された。
しかし、当時、映画で同性愛を匂わせることは不可能で、医師を巡る親友女性二人の奪い合いという噂が流されるという設定に変更されていた。
つまり、本作はワイラーによるセルフ・リメイクに当たる。しかも、「ベン・ハー」(1959)でアカデミー監督賞を受賞して二年の沈黙を得ての再映画化。
故に、本作にはかなりの思い入れがあると推察できよう。
確かに、ワイラー演出は、手前と奥に映る人間が、全く別な意思を持っているという雰囲気を浮かび上がらせて不安感を煽るパン・フォーカス撮影のカットやら、ガラス越しで肝心の台詞が一切聞こえず、人間の表情のみで、すべてを推察させるサイレント映画手法などを用いて、実に、冴えていると唸った。
カット割りで微妙に違う立ち位置の違和感も、こちらの不安感をワザと煽る編集だとも感じるが、終盤では、「あざとさ」に変貌してしまったのは残念だ。
出演陣ではヘップバーンは静かな「受け」の演技で上手いと感じたが、相手役シャーリー・マクレーンの無理さを感じさせる激しい演技には違和感を覚えた。
本来もう少し上手いと感じさせるジェームス・ガーナーも女性陣に圧倒されたのか影が薄い。
そんな出演陣の中では嘘つき少女を演じたカレン・バルキンと、「この三人」では主役側だったマクレーンの役を演じたミリアム・ホプキンスが際立って印象的。
閉鎖的空間をサスペンスフルに上手く利用した演出は、監督が次に撮る「コレクター」(1965)への大きな布石とも感じる。
女性たちのエゴと弱さを浮かび上がらせる会話劇を映像として捌くワイラーは、やはり上手い監督だと納得させられる作品。