いぬ – LE DOULOS(1963年)

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スタッフ
監督:ジャン・ピエール・メルヴィル
制作:カルロ・ポンティ
脚本:ジャン・ピエール・メルヴィル
撮影:ニコラ・エイエ
音楽:ポール・ミスラギ

キャスト
シリアン / ジャン・ポール・ベルモンド
フォージェル / セルジュ・レジアーニ
クラン警視 / ジャン・ドサイ
ファビエンヌ / ファビエンヌ・ダリ
ヌテッチョ / ミッシュエル・ピコリ
ヴァルノヴ / ルネ・ルフェーブル
ジャン / エメ・ド・マルシェ
テレーズ / モニーク・エタシー
カーン / カール・スチューダー

日本公開: 1963年
製作国: フランス ローマ・パリ・フィルム作品
配給: 東和


あらすじとコメント

鬼才ジャン・ピエール・メルヴィル。前回の「ギャング」(1966)同様に、今回も異彩を放ったフィルム・ノワールを選んでみた。裏社会に生きる男たちの生き様をクールに描き切った逸品。

フランス、パリ刑務所を出所したフォーゼル(セルジュ・レジアーニ)は、新たな強盗計画のため旧知の仲間を訪ねた。

現在、彼には新しい情婦テレーズ(モニーク・エネシー)がいるものの、入獄中に妻を殺されていた。実は、フォーゼルは、眼前にいる旧知の男こそ、妻殺しの犯人だと思っていたのだ。新たな計画には拳銃が必要だと告げ、銃を受け取ると即座に射殺し、彼が別件で強奪していた宝石類を奪った。

密かにそれを隠すと、何食わぬ顔で、親友のシリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)と会い、新計画に必要なガラス切断用の「吸着器」を受け取った。

そして、彼は別な相棒と強盗に押し入ろうとして・・・

警察の密告者が誰かという謎解きと裏社会に蠢く人間たちの生き様を描く渋いノワール作品。

出所後、懲りもせずに強盗計画を実行しようとするヒモ男。しかも、組むのは主人公ではなく、別な若者。それでも、旧知の友をサポートしようとする主人公。

しかし、どうにも主人公が『警察のイヌ』の気がしてならないヒモ男。果たして、強盗計画が失敗に終わり、警察が急行してきたのも主人公の密告ゆえと確信する始末だ。

当然、殺意が芽生える。それでも、主人公は何食わぬ顔で、我関せずという、個人の思惑で勝手に動いて行く。

そんな主人公の言動が観ているこちら側も、どっち側の人間か図りかねる進行。

かといって、奇を衒ったストーリィ進行ではない。要は、さほど複雑ではないのだが、描写方法が独特で画面に引き込まれる。

思わせぶりなアップ・ショットや、一定のリズム感を敢えて外す編集。こういった技法を用いて、何とも独特な雰囲気で押してくるとは、さすがのメルヴィルである。

ほぼ全員が悪役であり、それでいて、義理や人情という日本人が好きなセンチメンタリズムがドライさを伴って描かれる。

ただし、誰もが乗れるかというと、首を傾げる。

そこにフランス製ノワール映画特有のリリシズムがあると感じる。要は好きな人間には堪らない雰囲気。

白黒スタンダード画面だからこそのシャープなカットで紡がれる愉悦。

映画に何を求めるのかという、観る側のスタンスは様々であり、また、そうあるべきだと信じるが、個人的には、このメルヴィルという監督の発する寡黙な饒舌さは、ストーリィの整合性や、意外などんでん返しなどなくても、こちらの心を鷲掴みにして離さない。

裏社会でしか生きられない人間らを描かせたら天下一品の監督。

役者の起用も味があり、本作でもベルモンドの存在感は圧倒的。

ジャン・リュック・ゴダール作品から、ジャン・ギャバンと共演した、冬のノルマンディーの小さな町で繰り広げられる、忘れ難い人間ドラマの秀作「冬の猿」(1962)や、ジャッキー・チェンよりもスマートに動き回るアクション・コメディ群。そんなアクション・コメディ群に影響され、日本の漫画家モンキー・パンチが、ベルモンドを意識して書いたのが「ルパン三世」である。

実に器用な役者だと感じる。当時、日本では、フランス俳優というと、ベルモンドよりもアラン・ドロンが、特に女性には圧倒的な人気だったが、内心、首を傾げていたものだ。

ただ、個人的に、いつも格好付け過ぎ感のあるドロンの演技が光る、俳優としての存在感は「サムライ」(1967)がベストだと思っているが、それもメルヴィル監督作品である。

独特の空気感の中で、静かに呼吸する人間たちや街の息吹が幾重にも心に響く、捨てがたい秀作である。

余談雑談 2015年5月30日
遂にというか、案の定というか、個人的には、非常に残念なニュースが飛び込んできた。牛の生レバーに続き、来月中旬から豚内臓の生食も違法と相成ると。 先立て、ハワイの読者さんとご一緒した店の一軒も影響をモロに受けることになる。その方が気に入ってく