余談雑談 2015年6月20日

東京は梅雨空で肌寒さが続いている、とか。こちらは、現在沖縄滞在中なので、TVの情報だ。雨男さ加減が心配されたが、痛いほどの好天。どうやら汚名返上となるのだろうか。

今回のメインは8月で再開発のため、現状解体が決まった那覇市の「農連市場」訪問である。地元市民のための市場であり、朝5~6時がメインの時間帯。

宿泊先は、周囲がキャバクラなどの歓楽街の只中。一泊明けの早朝、早速、農連市場へ行こうとした。ホテルの周囲は酔客から、キャッチ、仕事上がりの女性など雑多な人々が、すでに30℃近い路上でゾンビのごとく蠢いていた。見知った場所でもあり、若干の土地勘も働く。ならば、散歩がてら徒歩で向かおうと決めた。

歓楽街から通りをひとつ越えると、実に静か。犬の散歩をする人ぐらいで、夜も明きっていない。やはり、東京とは若干の時差があるようだ。崩れ始めた夜が、薄っすらと陽の光と入れ替わる。東京とはまったく異質な鳥の鳴き声が、静かな町に響き渡る。

完全なる異邦人を感じる早朝。歩みを進めると、有名な「国際通り」に出た。走っているのはバスと車のみで、人影は皆無。いつしか鳥の鳴き声は聞こえなくなり、やはり有名な「市場本通り」のアーケードへ入った。

時間は、まだ6時前。観光客などいるはずもなく、ジューススタンドと乾物屋だけが開店の準備をしていた。双方とも老人男性で、乾物屋は早速、沖縄民謡をカセットで流していた。人っ子ひとりいない、何度も通ったアーケードに少しだけ民謡が循環する。そこを通り抜け、いよいよ農連市場へ。

成る程、地元の方々がいて、方言しか聞こえない。以前行った食堂を探したが、すでに閉店していた。この風景も見納めか。

夜が完全に明け、今日も暑くなりそうな気配。だが、寂寥感という寒風が心に吹いた。しばしその光景を目に焼きつけ、別れを告げた。

今回の旅は、晴天には恵まれたが複雑だ。数年前に買い求めた本を頼りに食堂巡りもしたが、ほとんどが移転か閉店。ある意味、ネットなどの生きた情報ではない紙媒体の限界を感じた。また、地元の友人のご厚意でドライブにも誘われたのだが、行き先に驚いた。

辺野古である。別にデモに参加するわけじゃないが、将来、地元民でも見られなくなるので、今の内に目に焼き付けておきたいと。

「農連市場」と「辺野古」。そして、週明けには「沖縄慰霊の日」を迎える。

時代は流れ、貴重な体験者や場所は死んでいく。滞在中ずっと晴れ渡った空を見つめ、やはり、複雑な心境を引き摺る旅になった。

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