ロシュフォールの恋人たち – LES DEMOISELLES DE ROCHEFORT(1966年)

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スタッフ
監督:ジャック・ドゥミー
制作:マグ・ボダール
脚本:ジャック・ドゥミー
撮影:ギスラン・クロッケ
音楽:ミッシェル・ルグラン

キャスト
デルフィーヌ / カトリーヌ・ドヌーヴ
ソランジュ / フランソワーズ・ドルレアック
エチエンヌ / ジョージ・チャキリス
イヴォンヌ / ダニエル・ダリュー
アンディ / ジーン・ケリー
マクサンス / ジャック・ペラン
シモン・ダム / ミッシュエル・ピコリ
ビル / グローヴァー・デール
ジュリアンヌ / ジャック・リベロワ

日本公開: 1967年
製作国: フランス シネ・タマリス作品
配給: 東和 タイヘイフィルム

あらすじとコメント

前回の「リオの男」(1963)で、ワガママなヒロインを演じたフランソワーズ・ドルレアック。カトリーヌ・ドヌーヴの実姉である。そんな姉妹が共演したフランス製のゴキゲンなミュージカル。

フランス、西南部のロシュフォール週末の祭に出演をするべくエチエンヌ(ジョージ・チャキリス)率いる一座が町にやって来た。彼らは各地の祭に合わせて全国を廻る浮草稼業の集団。

その町には、バレエ教室を営むデルフィーヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)と双子の姉で音楽家のソランジュ(フランソワーズ・ドルレアック)が、いつかこの町からでたいと願いながら住んでいた。そんな姉妹の母親イヴォンヌ(ダニエル・ダリュー)は、町の広場でカフェをやっている。

エチエンヌらは、舞台設営がてら、早速、カフェに顔をだして・・・

ハリウッド製とは、全く毛色の違う、飛びっきりオシャレなュージカルの秀作。

全国を旅する巡業一座。港町に住む美人姉妹。そんな彼女らには、歳の離れた腹違いの弟がいる。母親も美人だ。

他には、町なかで楽器店を始めた初老の紳士、彼の旧友で音楽家の有名なアメリカ人、それに運命の女性を探して世界を旅したという除隊間近の若い水兵、カフェのウェイトレスや、紳士然とした老人などが登場してくる。

そういった面々が、それぞれの個性を充分に発揮し、また、偶然に知り合って恋に落ちたり、ジレンマに陥ったり。

中には、かつて訳アリだったが、その相手が町にいることを知らず、思いのたけを募らせていたりと様々。

要は、誰と誰が一目惚れで恋に落ちるかとか、すれ違いでまったく出会わないまま、いつ運命的な出会いなり、再会をするのかという、こちらの興味を喚起させながら、ミュージカルとして進行していく。

本作の興味深い点はいくつもあり、そのどれもが成功していると感じる。

アメリカ映画では絶対にだせない、お洒落な雰囲気が全編を貫き、オール・ロケですべてが青空の下で繰り広げられる。全編がロケの「ウエストサイド物語」(1961)を意識した作劇でもある。

ファッションはパステル・カラーのみで、どの衣装も見事に町の景観とマッチして、まるでファッション雑誌を思わせる。

そういった色彩感覚や、絵画のような色のバランス、すべてが計算し尽くされた背景の中、人間の動きを移動撮影でワンカットの長廻しで見せる愉悦など、ハリウッド・ミュージカルでの極彩色の群舞とは全く違う、美的センス。

「ウエストサイド物語」で描かれたNYと違う、景観も異国情緒を奏でるのに成功している。

しかも、フランス的エスプリを強く感じるのは、「ウエストサイド物語」に主演し、世界的スターとなったジョージ・チャキリスを起用し、ドヌーヴとドルレアックという実の姉妹に双子役を振り、アカデミー賞を総なめにしたアメリカのMGMが誇る「巴里のアメリカ人」(1951)の主役であるジーン・ケリーを招聘し、かの作品を彷彿とさせる子供らとのダンス・ナンバーを躍らせる。

更には港町という設定なのに、一度も海を見せないまま、セーラー服の水兵や小型ボートだけで潮風を感じさせる巧妙さ。

ニヤニヤしながら、ストーリィも起伏に富み、登場人物も個性的。所詮、ミュージカルには悲劇は似合わないという観客の期待通りに進行しながら、当然のように町なかで、突然、歌い踊りだすセオリーを開き直って展開させる。

様々な作り手の思惑がことごとく成功したアメリカ製とは違う、稀有な傑作。

余談雑談 2015年6月20日
東京は梅雨空で肌寒さが続いている、とか。こちらは、現在沖縄滞在中なので、TVの情報だ。雨男さ加減が心配されたが、痛いほどの好天。どうやら汚名返上となるのだろうか。 今回のメインは8月で再開発のため、現状解体が決まった那覇市の「農連市場」訪問