スタッフ
監督:大友啓史
製作:中村光孝、角田真敏、門屋大輔 他
脚本:高田亮、大友啓史、大浦光太
撮影:相馬大輔
音楽:佐藤直紀
キャスト
グスク / 妻夫木聡
ヤマコ / 広瀬すず
レイ / 窪田正孝
オン / 永山瑛太
小松 / 中村蒼
チバナ / 瀧内公美
タイチ / 尚玄
徳尚 / 塚本晋也
辺士名 / 村田秀亮
マーシャル / デリック・ドーヴァー
製作国: 日本
配給: 東映、ソニー・ピクチャーズ
あらすじとコメント
戦後の沖縄史で大きな出来事であった「コザ暴動」。そこに集約されていく戦後の青春模様を描く骨太の力作。
沖縄、コザ
1952年アメリカ統治下で米軍基地に忍び込み、様々な物資を盗む「戦果アギヤー」と呼ばれる少年グループがいた。
仲間内で信望厚いリーダーのオン(永山瑛太)、グスク(妻夫木聡)、レイ(窪田正孝)たち。そしてオンの恋人ヤマコ(広瀬すず)はいつもフェンス際までで中には連れて行ってもらえないから不満気だ。
ある晩、基地内で略奪中に米軍に見つかり銃撃されて追尾されてしまう。仲間たちを逃しつつ、手ぶらでは帰れないと一人で戻ってしまうオン。しかし、その日を境に突然消息不明になってしまう。基地内で何が起こったのか。仲間たちは悶々とするしかなかった。
時は流れ、大人になったグスクは刑事になり、ヤマコは小学校教師になる夢を叶えるべく勉強に励んだ。ところが弟分だったレイはヤクザになり・・・
沖縄人らが戦後辿った数奇な運命を描くドラマ。
突然失踪するヒロイックなリーダー。何が起きたのか。生きているのか、死んでいるのか。
仲間は誰もがそれぞれの立場と思惑で彼を追っていく。
ただし、そう単純ではないのが「アメリカの植民地」という立場。米兵が事件を起こしても軍警察が来ると無条件で連行され向こうの法律で裁かれる。
そのほぼ全部が無罪放免になり県民は我慢するしかない。女学生がレイプされようが酔っ払った兵士に轢き殺されようとも。
当然米軍関係者との間に産まれる子供も多く、事実その一人が重要なカギを握る。
そんな中、刑事になった主人公は行方不明の真相を探るためになった職業ゆえ日本政府とアメリカ双方からスパイ容疑と軍の機密を探していると目を付けられる。
すべてに虐げられた沖縄県民の鬱憤が溜まっていき、どこまでも出口の見えない生活を強制され続けていった結果、1970年に爆発するのが本作のメイン。
ストーリィとしては琉球人を上から蔑視する日本政府関係者や本土のヤクザの目線、米軍関係者にも理解者がいないこともない中での蓄積からの爆発で分りやすい。
ただし、演じているのが沖縄系ではないので、誰もが若いながらも熱演や力演ゆえイタさとウソ臭さが漂い、妙なアンバランスさを生みだし興を削いでしまった。
劇映画としてはスタッフ、キャスト誰もが個人的思い入れとバランスを保とうと頑張っているだけに、それが逆な効果を生んでしまったとも言えようか。
沖縄県民には登場キャラクターの誰にも肩入れができそうだが、演者に対しては複雑な印象を持つかもしれないとも感じた。
それでもこだわりが随所に見え当時の再現にどれほど予算をかけたが分かるだけに残念さが際立つ。
ただし、エキストラには現地人を起用しているのでデモ行進や暴動場面での存在感のパワーには圧倒された。
キャストの中では行方不明になる永山瑛太と米兵なしでは生きて行けぬ水商売のホステス役の瀧内公美が印象的である。
力作だし、大作であることは間違いない。コザ暴動後にかつての「戦果アギヤー」出身の少年たちの関係性なりが集約されていきオチが付くのだが、それはストーリィとしての本筋なのだろうが余計とも感じた。
盛り上がるはずのラスト20分程度を何とかすれば印象がかなり変わったであろう。ゆえにこの長尺がプラスに作用していないのが残念。
何といっても暴動のシーンが迫力満点なだけに多くの琉球人のパッションが昇華する、ある意味でのカタルシスが尻すぼみになっていく印象を免れないから。
それでも沖縄という場所がどのように歴史を重ねてきたかと学習するには好材料であるし、県外から訪問する人は心して「楽しい観光」に行った方が良いかもしれない。
