スタッフ
監督:アンリ・ヴェルヌイユ
製作:ジャック・ストラウス
脚本:ジョゼ・ジョヴァンニ、P・ペレグリ
撮影:アンリ・ドカエ
音楽:エンニオ・モリコーネ
キャスト
ヴィットリオ / ジャン・ギャバン
サーティット / アラン・ドロン
ル・ゴフ警部 / リノ・ヴァンチュラ
ジャンヌ / イリナ・デミック
ニコシア / アメディオ・ナザーリ
ジャック / シドニー・チャップリン
マリア / エリーゼ・チェガーニ
テレサ / カレン・ブランゲルノン
セルジオ / マーク・ポレル
日本公開: 1970年
製作国: フランス フォックス・ヨーロッパ作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
今回もアラン・ドロン出演作。当時、フランス映画界の三大スターが夢の共演を果たしたクライム・アクションの佳作。
フランス、パリ。シシリー出身で、パリの裏町で表向き貿易会社を営むヴィットリオ(ジャン・ギャバン)は、息子たちと組んで収監中のサーティット(アラン・ドロン)を脱獄させた。切手コレクターのヴィットリオに22万ドル相当のコレクションを寄贈してきた返礼からだった。思わぬ脱獄劇に驚くル・ゴフ警部(リノ・ヴァンチュラ)。すぐさま捜査網が敷かれるが協力者を特定できず、いらだつ警部。
一方、サーティットはほとぼりが冷めるまでと、ヴィットリオの隠れ家に匿われるが、長男の妻でフランス女ジャンヌ(イリナ・デミック)に、すぐに色目を使いだす。そんな彼はヴィットリオにローマで行われる大宝石展の時価数億ドル相当の宝石を盗みださないかと持ちかける。彼は収監中、同房だった男が宝石展の警備の設計責任者で、システム・ダウンの方法を尋いたというのだ。それには協力者が必要だからとヴィットリオに白羽の矢を立てたと言うのだった。
早速、ヴィットリオはNYにいる同郷のニコシア(アメディオ・ナザーリ)に協力を要請する。ローマの宝石展で再会した二人は警備システムが強化されていることを知り、断念せざるを得なくなる。
しかし、このままでは引き下がれないと二人は別な強奪方法を考えようとするが・・・
シシリー出身のマフィア・ファミリーがチンピラと組んだことで起きる様々な出来事を描く犯罪映画。
メインとなるシシリアン・マフィアは、ファミリーによる血の結束がある。これはシチリア島が歴史上、様々な外敵によって侵略されてきた結果であるといわれている。そういった歴史的背景で、島の人間たちは自分たちで結束せざるを得なかった。だから他人よりも身内を絶対的に信用する。
今までもイタリア映画を含め、多くのシシリアン・マフィア作品が作られてきた。本作もその中の一本ということになるが、そのファミリーにフランス人のチンピラ色男が絡んでくるのがメイン・ストーリー。
当時、日本では絶大な人気があったアラン・ドロンがその二枚目を意気揚々と演じているが、個人的にはどうも、二流のホストに見えてしょうがなかった。それは、やはり前回紹介した「太陽がいっぱい」(1960)での強烈な印象ゆえだろう。
しかし、今回はフランス映画界のドン、ジャン・ギャバンと渋さにおいて右にでるもののいなかったリノ・ヴァンチュラが共演しているので映画全体が引き締まった。事実ヴェテラン二人の前では、ドロンがどんなに頑張ろうとも、却ってチンピラの若僧という局面が際立つ。しかし、本作でのドロンの役柄を考えると、それがリアリティを生んでいるのも事実。中々、上手い起用だと思った。
監督はアンリ・ヴェルヌイユ。主役三人とは以前にそれぞれ組んでいる。ギャバンとは「ヘッドライト」(1956)、更にドロンと組んだ「地下室のメロディー」(1963)、他にも以前ここで紹介した本作に唯一出演していない大スターのジャン・ポール・ベルモンドと「冬の猿」(1962)で。そして、ヴァンチュラはベルモンドと共演した「太陽の下の10万ドル」(1964)で起用している。
つまり監督は大スター三人とも仕事済みなので、本作でも萎縮することなく彼らを捌いていく。当然、それぞれに見せ場が設けられ、それぞれのファンが納得するような絶妙のバランス感覚でくすぐる。上手い監督だと思うし、実際、超有名作ではないが、興味深いフランス映画を数多く演出している。しかもそのほとんどが当時のスターを使っているという実績がある。
以前にも書いたが、ヴェルヌイユ演出は緻密な計算でなく、ある程度俳優の力量に任せるとか、カメラ・ワークや編集でのやや大雑把な鷹揚さが感じられるので、人によっては苦手意識を持つかもしれない。しかし、パリ、ローマ、NYといったロケを多用し、国際色豊かな展開でスケール感をだしつつ、かつ、小難しい視点を排除して解りやすい作品に仕上げてある。
他のスタッフも、脚本はフィルム・ノワール界の雄ジョゼ・ジョヴァンニ、撮影は「太陽がいっぱい」のアンリ・ドカエ、音楽はイタリア映画界の巨匠エンニオ・モリコーネといった一級のメンバーが集結している。当時、フランス映画界がどれほど入れ込んで作った作品であるかが推察されよう。
ハリウッド製の娯楽大作とは一線を画する作劇なので、好き嫌いは別れようが、個人的には娯楽映画として優れた作品だと感じている。