暁の出航 – MORNING DEPARTURE(1949年)

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スタッフ

監督: ロイ・ベイカー
製作: ジェイ・ルイス
原作: ケネス・ウーラード
脚本: W・H・C・フェアチャイルド
撮影: デズモンド・デッキンソン

キャスト

アームストロング艦長 / ジョン・ミルズ
スナイプ / リチャード・アッテンボロー
マンソン少佐 / ナイジェル・パトリック
ヒギンズ / ジェームス・へイター
マクマフィー / アンドリュー・クロフォード
ヘレン / ヘレン・チェリー
ローズ / ラナ・モリス
ゲイツ中佐 / バーナード・リー
ジェームズ少佐 / ケネス・モア

日本公開: 1950年
製作国: イギリス アーサー・ランク作品
配給: BCFC NCC

あらすじとコメント

今回はイギリス製の潜水艦映画。戦時下の設定ではないが、前回の「潜水艦浮上せず」と同様、暗い作品でもある。

イギリス某海軍基地。潜水艦トロイアン号が、朝焼けの中、出航した。目的は新たに開発された「対潜レーダー探知機」試験のためだ。午前中には試験を終え、午後には帰港予定であった。

アームストロング艦長(ジョン・ミルズ)は、出航直前、妻から、海軍を辞めて彼女の父親の事業に就いて欲しいと言われ、帰投後、返答すると答えていた。副官は、恋人とのデートに気持ちが弾み、若いスナイプ(リチャード・アッテンボロー)は、新婚早々、夫婦喧嘩をしたので、あやまりたいと思っていた。

そんな中、突如、探知機が反応した。戦時中に投下され、未発見のまま浮遊していた機雷である。艦長は急速潜航を命じた。何とか、かわせたと思った瞬間、船尾で衝撃を感じた。

そして艦はそのまま海底へと沈んでいって・・・

いかにも往年のイギリス映画らしいシブい作品。

オリジナルは舞台劇。つまり、派手なアクションなどは一切なく、ひたすら艦内で起きる人間ドラマがメインとして進行する。

メインの脱出口は浸水し使用不可能。残るは4名が脱出できる装置が二基のみ。乗員は12名である。

しかし、本作は戦時下の設定ではない。つまり、味方の艦船が総力を挙げて、救出に向かってくれるのだ。この設定が、若干、緊迫感に欠けるのだが。

当然、艦内で取り乱す人間もでてくるが、前回の「潜水艦浮上せず」とは違い、さすが、イギリスなのか、統率が取れている。

そして、潜水艦内と彼らを救助しようとする海軍の姿がセミ・ドキュメンタリー・タッチで繰り広げられていく。

救出方法や、酸素の問題などが次々と浮上するが、それらを丹念にクリアしていく作劇。問題は、最終的に残された4名が潜水艦ごと救助されるまで、長期化するという点に集約されていくのだ。

当然、今度は食料や水の問題が発生してくる。こればかりは酸素と違い供給不可能。しかも、病気を発症すれば、薬もない。

その中で、繰広げられる男たちのドラマ。残っているのは艦長、副官、新婚の水夫、ヴェテランの食事当番兵である。

動きの少ない、実に地味な展開である。しかし、面白いと感じた。それは、役者陣が皆、上手く、広がりを見せない展開を渋く丹念に描写していくロイ・ベイカー監督の力量が挙げられよう。

ベイカー監督は本作以後、アメリカに渡り、なぜかマリリン・モンローとリチャード・ウィドマークが出演した「ノックは無用」(1952)を撮るが、水が合わなかったのか、イギリスに戻った。

そして、南米からイギリスへ超記録的スピードで航海しようとする貨物船を描く海洋アクション「颱風圏」(1955)、傑作中の傑作「SOSタイタニック 忘れえぬ夜」(1956)を立て続けに発表し、更に本作同様、ジョン・ミルズが艦長役を演じ、英国戦艦を沈没させるために爆弾を仕掛けたイタリア軍フロッグメンとの駆け引きを描いた佳作「巨艦いまだ沈まず」(1962)といった作品群を送りだしている。

つまり、『水』の恐怖を描かせたら、流石な監督なのである。

大好きな監督のひとりでもあるのだが、晩年は「ドラキュラ」などで有名なハマー・プロで、B級怪奇映画や、恐怖映画を専門に撮っている。

本作は白黒で地味な作品ゆえに、知名度はまったくなく、忘れ去れた映画であるが、中々どうして、捨て難い作品である。

余談雑談 2010年1月16日
寒気団の所為で、東京は、雪こそ降らぬが、矢鱈と寒い。 それでも、関係なく飲みに出掛ける自分。ただ、今年から少しだけ志向を変えた。 三河島にある酒場へ行くときは、自宅から3キロほど歩いて行くことにしたのだ。生活習慣病に配慮して、といえば聞こえ