ストロンボリ – STROMBOLI(1949年)

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スタッフ

監督: ロベルト・ロッセリーニ
製作: ロベルト・ロッセリーニ
脚本: アート・コーン
レンツォ・チェサーナ
セルジオ・アミディ
G・P・カレガッリ
原作: ロベルト・ロッセリーニ
撮影: オテッロ・マルテッリ
音楽: レンツォ・ロッセリーニ

キャスト

カーリン / イングリット・バーグマン
アントーニオ / マリオ・ヴィターレ
司祭 / レンツォ・チェサーナ
燈台守 / マリオ・スポンゾ
ギター弾き / ガエターノ・ファムラーロ

日本公開: 1953年
製作国: イタリア ベリット・フィルム作品
配給: 映配


あらすじとコメント

ロッセリーニ監督作品。主演は、当時大いなる話題になったイングリッド・バーグマン。過酷な場所に移り住む余所者女性の激情。

1948年      イタリア。とある難民キャンプに収容されているリトアニア出身のカーリン(イングリッド・バーグマン)は、戦時中、故国を追われ、イタリアに不法入国した。

戦争が終わり、彼女は正式に移民として、留まりたかったが、不法入国が元で不許可になった。そんな先行きのまったく読めない不安から、カーリンは、必死に彼女に取入ってくる珍しい訛りの話し方をするイタリア男のアントーニオ(マリオ・ヴィターレ)との結婚を決めた。結婚さえすれば、イタリアに居残れると踏んだからだ。

有頂天のアントーニオは、彼女を連れ、意気揚々と故郷の島ストロンボリへ戻ってくる。

しかし、そのストロンボリという場所は・・・

閉鎖的な島で、戦時下以上に苦悩する女を描く作品。

足の形をしたイタリア半島。爪先で蹴ったサッカー・ボールのように、左に位置する大きな島シチリア。その間にあるのがエオリア諸島である。

ストロ ンボリ島とは、その中に存在する島である。

非常に厳しい環境下に置かれ、荒れた岩肌ばかりが目立ち、豊穣なる田畑や、牧畜、酪農という生業もなく、生活を潤す資源がまったくない。

ゆえに、世界中の人間が憧れる観光立国イタリアの中でも、まったく観光地としては人気がない地域でもある。

当然、現在でも空港もなく、船でしか上陸できない島。未だに、本島かシチリアから長時間かけて渡航するしかない場所である。そして、何よりも島全体が活火山であり、常に噴火の危険と隣り合わせ。

人が近寄ることを拒絶しているような島でもある。しかし、当然、そこにも住人はいる。

そこに、嫁いで来る訳あり女が主人公。時代は敗戦後。混乱は収まったものの、生活物資など乏しく、普通に生きることが困難な時代。

バーグマン扮する主人公は、祖国で結婚していたが、夫が死に、家族全員も死んだという設定。そして、ドイツ占領下で女性が生きる術は、ある意味、『簡単』である。

そうやって生き延びてきた「タフさ」を絵に書いたような女。今度こそ、上等な生活を送りたいと願う女が連れてこられのが絶望的な島である。しかも夫は軍隊での生活以外知らない、子供みたいな男。

当然、女は違和感を覚え、自分はまったく価値観の違う異邦人であると亭主や島の人間たちに直情的に相対していく。それが、超閉鎖的な島で、どういう状況を産みだすのか。

亭主は何とか嫁に好かれようと、島で4隻しかない漁船にもぐりこみ、漁師として養おうとする。しかし、稼ぎはたかが知れている。そのことにも激高する主人公。

しかし、ハッキリ言って失敗作である。ただし、それは、あくまでロッセリーニ作品としてという、「ことわり」がつくのだが。「無防備都市」(1945)、「戦火のかなた」(1946)で、世界を席巻したネオ・リアリズモの旗手。

その作品群に魂を揺さぶられたひとりにハリウッドの大女優だったイングリット・バーグマンもいた。

バーグマンは、激烈なるラヴレターを送り、妻子持ちだったロッセリーニの下へ走り、『世紀の掠奪愛』として、世界中を驚愕させたのだ。

そして、本作が作られた。当然、世界中が固唾を呑んで見た。ある程度は受け入れられたが、以後、ロッセリーニの名声は地に堕ちていく。

同盟国であったドイツ・ナチスへの嫌悪感を戦時下で心血込めて、否や、命懸けで映画を作った男が、世界的に認知されたが、平時になり、その闘争心の拠り所を失った。

その情念の持って行き場に、戸惑っていたのだろう。そこへ、世界中の誰もが、「清楚なる美人」として憧れた大女優が飛び込んできたのだ。

本作はその監督の、どこか『頭でっかち』になったジレンマを感じさせる演出と、監督が自分以前に付き合っていたイタリアの女優アンナ・マニャーニのように、大袈裟な手振り身振りで、激情的な女を体現しようとしたバーグマンの、以前までの彼女らしからぬ演技によって、全体のトーンを崩壊させたと感じた。

映画自体は失敗作であるが、恵まれたふたつの才能が、『恋』によって、融合し、昇華するのではなく、どう瓦解していくかを知るには好材料の作品。

余談雑談 2010年5月22日
またもや肩にボルトが入った。今度は、一回目の時よりも長い代物で、抜けにくくなっているらしい。 一回目のときに、何故、埋めたはずのボルトが骨から抜け出てきたのかはドクターたちも首を傾げるばかり。なので、その轍を踏まないためか、今回は慎重だった