スタッフ
監督： ジョセフ・G・ニューマン
製作： サミュエル・M・エンジェル
脚本： ハリー・クライナー
撮影： チャールス・G・クラーク
音楽： ソル・キャプラン
キャスト
メイソン / リチャード・ウィドマーク
エリー / コンスタンス・スミス
ミラー / ジェフリー・ハンター
ドライヤー / リチャード・ブーン
バージェス / ウォーレン・スティーヴンス
パパ・ミラー / ジョー・ソーヤー
パターソン / ジェームス・グリフィス
ネフ / チャールス・ブロンソン
ノクソン / リチャード・クレンナ
日本公開： 1959年
製作国： アメリカ 20世紀フォックス作品
配給： 映配、海外映画
あらすじとコメント
強烈なる悪役でデビューしたリチャード・ウィドマーク。実は、多彩な役を上手くこなす実力派でもある。本作は、長年、興味がありながら、一度もビデオ化もされたことがなく、ある意味、「幻の作品」であり、未見のままであったが、とある読者様のご厚情により、やっと巡り合えた。印象は、実にウィドマークらしさがでた、捨て難い作品に仕上がっている。
アメリカ、モンタナ。落雷により、森林火災が発生した。ただちに消火活動が開始されるが、火勢は増す一方であった。
そんな中、森林警備隊所属の消火部隊のメイソン隊長（リチャード・ウィドマーク）にも出動命令がでた。直ちに隊員5名を率いて輸送機に乗り込む。何と彼らは危険を省みず、火災現場にパラシュート降下するのだ。
6人は無事降下し、消火活動に着手。しかし、突如、風向きが変わり、炎がメイソンたちに近付いてきた。やがて、本部との無線連絡が途絶えてしまう。
翌朝、現場に向ったヘリコプターは、たったひとり大火傷を負いながらも生存していたメイソンを発見、保護。更に現場では3名の焼死体を発見したものの、他の2名が行方不明だった。
その不明者の片方の息子で、やはり消火隊員のミラー（ジェフリー・ハンター）が、メイソンの生存に疑問を抱き・・・
森林火災を背景に描くサスペンス・アクションの佳作。
広大なアメリカで自然災害といえば、ハリケーンと森林火災である。そのひとつ『森林火災』を扱っている作品。
これは、映画的に迫力あるシーンが撮れるので、昔から、取り上げられてきた題材でもある。
落雷などで、一度、火がつけばあっという間に燃え広がり、消火活動は至難の業。これは現在でも同じで、メインの消火活動は空からの薬品散布。地上での活動は、風向きを計算して森林を伐採し、延焼を食い止める。しかし、自然が相手である。人間の思い通りには行かない。
本作もそれをメインとして描く。しかも、たったひとり生き残った主人公は、一時的な記憶喪失になり、死んだ同僚の息子が詰問すると、答えが要領を得ないので、仲間を見殺しにして自分だけが生き残ったと思われてしまう。
そこに、リチャード・ウィドマークを主役に据えたセンスが感じられる。これが、ゲーリー・クーパーやジェームス・スチュワートといった、いかにも善人役専門の役者だったら、単なる若僧の誤解だろうと察しがつく。ところが、強烈なる悪役出身のウィドマークである。しかも、若僧役は当時、売出し中の二枚目ジェフリー・ハンター。見ているこちら側も、もしかして、と感じていく。
記憶喪失になった所為で主人公は閑職に追いやられるが、また、大規模な山火事が発生。再度、消火活動に加わるが、主人公が証言した場所と違うところで父の遺品を見つけだした若者も参加。
山火事と敵討ちが入り混じる展開になっていく。火災シーンは中々、迫力があり、特撮も見て取れるが、実際に炎の中で、俳優たちが繰り広げるシーンは素晴しい。
一度消えたかに見えた場所から、再出火する恐怖。燃え広がる炎の所為で、突如、上空の雲行きが変化する。気が付くと周りに逃げ場がなくなっていく。
そこで、どのような対応を取るのか。現在のような防火服はなく、頭に被るのは、前面に網が被さっているだけのアメリカン・フットボールで使用するようなヘルメット。携行する装備も『斧』や『鉈』である。
そういった時代だからこそ、人間の知恵や経験が重要性を帯びてくる。またそこで、主演のウィドマークの個性が光るのだ。
主題となっているのは『思い込み』と『思い上がり』。それが人間の強みでもあり、弱みでもある。しかし、何であれ、自然の前では、人間はあまりにも小さいと感じさせる作品。
