スタッフ
監督:デルマー・ディヴィス
製作:ウィリアム・J・ファディマン
脚本:ラッセル・S・ヒューズ、デルマー・ディヴィス
撮影:チャールス・ロートン Jr
音楽:デヴィッド・ラクシン
キャスト
ジューバル / グレン・フォード
ホーガン / アーネスト・ボーグナイン
ピンカム / ロッド・スタイガー
メエ / ヴァレリー・フレンチ
ナオミ / フェリシア・ファー
ヘイスリップ / チャールス・ブロンソン
マッコイ / ジャック・イーラム
ホクター / バジル・レイスデール
サム / ノア・ビアリー Jr
日本公開: 1956年
製作国: アメリカ コロンビア作品
配給: 東宝、コロンビア
あらすじとコメント
グレン・フォード。実に多くの出演作があるが、今回も西部劇にしてみた。しかも監督は「決断の3時10分」(1957)同様、デルマー・ディヴィス。孤独な西部男の見栄というか、男としての生き様を渋く描いた作品。
アメリカ、ワイオミング。吹雪によって馬を亡くし、徒歩でふらついていたジューバル(グレン・フォード)。彼は峠を通りかかった牧場主ホーガン(アーネスト・ボーグナイン)に助けられ、牧場に連れて行かれた。
そこには3人のカウボーイがいた。元々はカウボーイのジューバルだが、仕事がなく羊飼いをしていたと知ったピンカム(ロッド・スタイガー)は、プライドを捨てた男だと彼を忌み嫌った。それを敏感に感じ、すぐに牧場を辞そうとする彼をホーガンが引き留めた。その態度に人情を感じた彼は居残ることを決める。
そんな彼を熱い眼差しで見つめる女がいた。ホーガンの美しい妻メエ(ヴァレリー・フレンチ)だった・・・
孤独な男が、複雑な人間の感情に翻弄される異色西部劇の佳作。
世捨て人というか、どこか人生から降りて、逃げ続けている牧童。そんな男が醜男だが気の良い牧場主の温情で人生の再起を賭ける。だが、先輩牧童から妬まれ、人妻からは色目を使われ困惑する物語。
その他にも、様々な敵味方入り乱れての人間模様が起きる。
主人公は何故か、ことが起きそうになると逃げだして来た男だ。中盤、その理由が明かされるが、どちらかというと、少々、男らしくない由来である。
しかし、映画としては、地味ながらも哀愁と男気を見せ、しかし、それが逆にトラブルを引き起こして行く。
派手な銃撃戦やスケール感溢れるアクションはでて来ない。それでも、見ていける安心感がある。
それは偏にデルマー・ディヴィス監督の手慣れた職人芸が光るからであろう。
役者も興味深い面々が、多少、いつもと違う役柄を嬉々として演じていて面白い。
影のある主役のグレン・フォードは、どこか繊細さが勝る「シェーン」(1953)のアラン・ラッドのイメージに重なるが、悪党ズラのアーネスト・ボーグナインと、実際の悪役のロッド・スタイガーが、体型的な所為かもしれぬが、妙に重なって見えるのは面白いと感じた。
途中から登場するチャールズ・ブロンソンの妙な助太刀加減や、まだスリムで若いジャック・イーラムなど、何とも微笑ましいので、西部劇の割には、当時として、の斬新さを感じた。
また、極端なタイプとして登場してくる女優も、適役と言えようか。そんな登場人物が、ある意味、取ってつけたとも呼べなくはないが、物事を複雑にしていく展開には、妙味を感じた。
強い癖に精神的には脆い牧童という主人公と、そこに母性を喚起させる二名の女性。また、その匂いを嗅ぎ取り、極端な言動を取る男たち。
昔の日本の任侠映画とも呼べる設定。個人主義優先のアメリカであるが、「義理」と「人情」を感じさせ、さり気ない「哀愁」さえ喚起させる作劇は、日本人としての自分に、妙に合致した。
大作でもないし、派手な見せ場もない小品だが、安くて旨い日本酒に巡り合ったような郷愁を感じさせる力作ウェスタンである。