余談雑談 2013年8月10日

益々、休みモードだ。来週は、多くの人が休みを取る一週間。当然、飲食店もである。

そんな中、たった一軒だけ残る、30年も通い続ける『我が心の最高の酒場』に出向いた。何度かここで書いたが、以前は、優しいオヤジさんと、おしゃべりなお母さんとで営むカウンターだけの店である。それがテレビや雑誌で紹介され、ネットでも評判を呼び、行列の絶えない店となった。

しかしオヤジさんが亡くなり、お母さんと娘さんで営むようになり、俄か熱病も過ぎて、以前の静けさを取り戻し、ホッとしていた。

いつもは自室から約3キロを徒歩で向かう。しかし、梅雨と、明けて以降の酷暑の所為で一ヶ月以上、間が空いていた。

日曜の夕刻、久方振りだとドアを開けると、カウンター奥の席にお母さんがぐったりと坐っていた。一瞬、絶句した。

見知った常連は誰も居ないが、8割の入り。娘さんが一人でテキパキと捌いている。お母さんは、たまに立ち上がり、手伝うが、以前のような元気さが一切ない。別人かと思ったほどだ。

自分の定席は、お母さんがひと息付く隣席。こちらも、余りの変化にかける言葉もない。以前とは違う静けさが流れる店内。お母さんは、朝7種類、夜は5種類の薬を飲むんだと、小さな声で話しかけて来た。何故か分からないけど、もう満身創痍よ。

嫌な予感がする。本当に、自分の聖地である酒場がなくなるのではないか。昨年末に、老夫婦が営む「もつ焼き屋」が閉店し、号泣した経験がある。まさしく、最後の砦でもある店。

自分は、決して前向きではないから、色々調べて、話題の店や、評判の店と新規開拓とばかりに、次々と店を探すタイプではない。そんな性分で最後まで残り続けた店。

雨だとか、暑いからとか言い訳はすまい。自分の中で、何が重要か。

店は、来週から9日間の夏休み。休み中は、お母さんの実家の山形に行くと言う。

しかも、自分も何度かお邪魔した、80歳過ぎの義姉が住む、お母さんの実家を引き払うとも聞いた。娘さんも、近くの「新興住宅地だとサ」と、寂しげに笑った。今年は大きな水害も発生し、冬の雪かき等、一人で住むには大変だろう。しかも、義姉にとっては嫁ぎ先の家である。

店のお母さんにすれば、嫁いで来て以降、ほぼ休みなく、ずっと朝から店を手伝い続け、初代が亡くなり、旦那も亡くなった以降も、性分だからと、娘と営業を続けてきた店。そして生まれ育った実家がなくなるのだ。

時代の流れだから仕方ない、と片付けられようか。それにしても、何だ、この心持ちは。

単なる客のワガママだが、お母さんが元気を取り戻し、まだまだ頑張って欲しいと願うばかりだ。

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