暫く振りにマスコミ試写に出向いた。観たのは「御手洗薫の愛と死」(2013)
飲酒運転で事故を起こした大女性作家が、事件を隠蔽しようと相手の息子に示談を持ちかける。ところが、その息子が売れない小説家だったことから、隠蔽条件として、泣かず飛ばずの自分のゴースト・ライターになれ、と言われる内容。
親子ほど年が離れ、且つ、実力もまったく違う二人の小説家の行く末を描いて行くのだが、妖しさが絡むミステリアスな進行で、低予算ながらも妙味。
ただし、個人的に旧知な間柄の両沢監督は、テレビの脚本家出身ゆえの、いかにもテレビドラマ的な 説明的展開と予定調和調ラストに行きつくので、些か残念さを感じた。
監督も言っていたが、現在、日本では安心、信頼の役者がいないというジレンマを感じさせた。ただ、逆にそれらが、内容や進行と、妙なバランス感を醸しているのが興味深かったのだが。
そもそも、彼の持論である、評論家など必要がないという、台詞も堂々と飛びだして、試写室の空気が、一瞬変わり、それにより、好意的な批評は減るだろうとも感じた。
実は、本作は既に二年も前に完成していたが、映画を上映してくれる映画館がなく、事実上、「お蔵入り」状態であった。
現在、常に公開待ち作品がかなりあり、特に低予算の邦画は、製作したものの、話題性なり、ある程度のヒットが見込めないと、上映してくれるミニシアターなりがないのだと。それはシネコンの台頭が大きいとも言われる。
日本中から映画館や名画座が消え、取り敢えずシネコンに行きさえすれば、話題作の何かは見られる。所詮、映画がその程度の娯楽となった証かもしれぬ。
いやいや、半年と待たずにレンタルで見られるし、携帯タブレットでも、ダウンロードし、鑑賞できる。ある意味、便利で素晴らしい時代。
でも、折角製作した作品が、一般上映できる機会を得た両沢監督を祝福したい。他にも、多くの作品が公開待ちをしている。その中には、素晴らしい映画もあるだろう。
また、時代が変わり、小さな映画館なり、単館映画館が増えることを祈念する。
やはり、映画は暗闇の中でこそ、生きるのだろうから。