スタッフ
監督:ポール・ウェンドコス
製作:チャールズ・H・シニア
脚本:ダニエル・ウルマン、スティーヴン・カンデル
撮影:ウイルフリッド・クライン
音楽:アーネスト・ゴールド
キャスト
コンウェイ / クリフ・ロバートソン
カレン / ジア・スカラ
森 / 島田輝
シェクター / ライアン・ガリック
ロス / ジーン・バークレー
押川 / 山城エイジ
ウィットコム / パトリシア・カッツ
ハリディ / L・Q・ジョーンズ
ベイツ / ゴードン・ジョーンズ
日本公開: 1959年
製作国: アメリカ コロンビア作品
配給: 大洋映画
あらすじとコメント
潜水艦乗りたちが収容所から脱出する話。だが、今回は、ドイツ軍ではなく、参戦直後のアメリカ海軍が南太平洋の日本軍収容所から脱走しようとする作品にしてみた。
オーストラリアアメリカ海軍所属の潜水艦ゴールドフィッシュ号がコレヒドール島から、高官を護送し、ハイスピリット基地に帰港した。
すぐに艦長であるコンウェイ少佐(クリフ・ロバートソン)が、司令部に呼ばれる。休む間もなく、次の任務が下ったのだ。命令は、「珊瑚海近海にいる日本海軍第五艦隊の動向を探り、艦船の写真を撮影せよ」技術畑のロス大尉(ジーン・ブレークリー)開発の特殊カメラを装着し、出港した。
機雷が沈む海を縫うように進み、無事任務は成功した。しかし、探知機雷に接触したことから、敵に発見され攻撃を受けてしまう。玉砕覚悟で応戦を考えるコンウェイだが、折角の情報が無駄になると思い、密かに魚雷口から写真類を発射し、降伏する道を選んだ。
すぐに日本軍の取り調べが始まった。担当するのは日本海軍の森少佐(島田照)だ。コンウェイは通常任務とシラを切るが、捨てたはずの袋が回収されており、スパイ容疑がかけられて・・・
潜水艦から収容所脱走へとシフトする変わった意匠の映画。
特命の情報収集の任を受けた潜水艦。その詳細を知ろうと躍起になる日本軍。しかも収容所にはオーストラリア軍の兵士や看護師がいて、更に、日米のハーフで通訳の美人まで登場。
設定としては面白いかもと思う御仁もいようか。
まして前半は、潜水艦映画の態で進行し、突然、収容所モノへとギアチェンジしていく。
潜水艦がメインの戦争映画は佳作も多いし、日本軍の収容所モノというと、アカデミー賞を多く受賞した「戦場にかける橋」(1957)が浮ぶ。
それを合体させようとした欲張った展開ではある。しかし、勘の良い映画ファンなら、想像付くだろう。そんなに上手く行くのだろうか、と。
果たして、その通りの映画である。自分もタイトルだけは知っていたが、昔なら完全にスルーするタイプの作品。
それでも、アメリカでDVDが発売されると、怖いモノ見たさの悪い虫が疼いた。
何と言っても、敵が日本軍である。どのように描かれているのかに、とても興味が湧く。
殆どの日本兵は、きちんとした日本語も話せない二世か、アジア系。ただ、日本側司令官を演じる島田照なる役者は、そこそこに存在感があった。
実際に兵役経験者なのか、日本語も普通だし、海軍士官として、それなりに見えた。調べてみると、「007は二度死ぬ」(1967)や、サミュエル・フラーの「東京暗黒街/竹の家」(1955)など、戦前からハリウッドで活躍する俳優であった。
しかし、内容はツッコミどころ満載。当然、日本のことなど知っている人間もおらず、海上で主人公らを拿捕した海軍士官が、何故か孤島にある陸軍管轄と思しき収容所所長を兼務している。
これは絶対にあり得ない。そんな所長兼務の海軍士官が、部下に捕虜と「相撲を取れ」と笑いながら命じる。最初こそ四股らしきものを踏むが、いきなり蹴りから背負い投げと、なぜかプロレスか柔道のようになる。
苦笑を禁じ得なかった。恐らく映画館では爆笑の渦になったに違いない。
ただ、写真等の情報を奪還しつつ脱走に成功し、その情報を元にラストで、特撮やドキュメンタリー画像、日本映画まで挿入して描かれる海戦シーンは、編集の妙もあり、良く出来ていると感じた。
あくまでも娯楽戦争映画として真面目に作劇してあるからこそ、自国が敵として描かれる場合、どうしても、うがった見方をしてしまう。
しかし、外国の戦争映画では、現在に至るまで、珍妙なるシーンを堂々と制作するのだ。
その流れを汲むB級作品と位置付ける。