ふたり自身 – THE HEARTBREAK KID(1972年)

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スタッフ
監督:エレイン・メイ
製作:エドガー・J・シェリック
脚本:ニール・サイモン
撮影:オーウェン・ロイズマン
音楽:サイ・コールマン

キャスト
カントロー / チャールス・グローディン
ケリー / シビル・シェパード
ライラ / ジーニー・バーリン
コーコラン夫人 / オードラ・リンドレー
コーコラン氏 / エディ・アルバート
ラルフ / ミッチェル・ジェイソン
コロラド男 / ウィリアム・プリンス
カントローの母 / ドリス・ロバーツ
コロドニー / ジャック・ハウスマン

日本公開: 1973年
製作国: アメリカ パロマー・ピクチャーズ作品
配給: 20世紀フォックス


あらすじとコメント

プレイボーイと女性二人の三角関係。しかもコメディなのだが、妙に笑えない作品で連想。主人公が、シナトラばりに二枚目でないところに時代性を感じるが、それでも結構好きな作品。

アメリカ、ニュー・ヨークスポーツ用品店に勤務するカントロー(チャールス・グローディン)は、二十代後半の青年だ。

ある日、町で偶然見かけたライラ(ジーニー・バーリン)に一目惚れし、慌ただしく求婚し、オッケーを貰った。二人とも大都会で孤独だったのだろう。二人の身の丈に合った地味な式を挙げ、新婚旅行に出発した。

ところが、妻になったライラの態度が豹変、というか、彼女の本能が露わになる。細かいことに口をだし、彼を質問攻めにする始末。初夜も同じで、カントローは初日から絶望的な気分になる。それでも彼の気持ちなどお構いなしに自分の意見なり願望を押し付けるライラ。いよいよ旅行のメインであるマイアミに到着するころには、カントローは、この結婚は失敗だったと感じ始めた。

ホテルに着き、降り注ぐ陽光を浴びようと彼はプールに行こうと誘うが、泳げないという一言で彼女は拒否。ならばとひとりでプール・サイドに行くと、家族と一緒に来ていたスタイル抜群で、ブロンドの髪をなびかせるケリー(シビル・シェパード)に、目も心も奪われた。

失敗だ。結婚は早計過ぎた。そう感じた彼は、なりふり構わず彼女に近づいて行った・・・

思い込みの激しい青年が巻き起こす珍妙なる女性観を描く作品。

自惚れの強い青年。一度、これと決めたら猪突猛進するタイプ。

そこが女をたぶらかすプレイ・ボーイのイメージとは多少違うが、結果的に女性たちの個性や価値観より、自分の生理が優先。

結局、何やかやと言っても、自己愛に満ちた身勝手な主人公の言動が、コメディとして受け入れらるかどうかが、好き嫌いの分かれ目でもあろう。

しかも、自分は正しいと信じ込んでいるから厄介なのである。だから、結婚が間違いと感じると、別な理想女性に乗り換えようとする。

妻は持ちながら愛人は別という価値観でないのが、まだマシかもしれぬが、だからこそ真剣なトラブルを生んでいくという進行。

身勝手な論理で相手を丸め込もうとしたり、相手はおろか、先方の両親をも抱き込んで行こうとする姿にニヤニヤの連続である。

当然、相手にそこまで口説かれて、行動されれば心が揺れ動いていくのも頷ける。ところが、女性だって、新婚早々、離婚する男をどこまで信用出来るかと不安もある。

そして主人公が自分にどれだけの愛を持っているのかと本心を計ろうとする手段が、また、実にイヤらしい。

笑うに笑えない内容であるのが、そこいらのコメディとは違い、妙に心動かされた。

自分の価値観をおかしいと思わず、一本気に猛進する主人公を演じたチャールス・グローディンの存在が、二枚目ではないゆえに上手いと感じた。

成程、以後、好きな作品である「ミッドナイト・ラン」(1988)で主役のデ・ニーロを完全に喰ったり、ニセ大統領が活躍するハートフル・コメディの佳作「デーヴ」(1993)など、脇役でしっかりと支え、作品に輝きを加味させる役者になっていく。

それに本作は、何ともブラックな人間の機微を描く脚本が、ニール・サイモンというのも興味深い。

複雑な心境に陥らせながら、でも、これぞハッピーエンドというのもイヤらしいコメディ。

余談雑談 2017年3月25日
今週、東京は冷たい雨の中、全国初で桜の開花宣言が出た。ご丁寧に、寒の戻りで開花期間が長いとか、満開はいつ頃とか放送している。 となると毎年の如く、桜で有名な自室眼下の公園は、これから二週間程度は凄い人並みとなる。 今から、思いやられる。ただ