赤裸々な事実 (未) – THE NAKED TRUTH (1957年)

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スタッフ
監督:マリオ・ザンピ
製作:マリオ・ザンピ
脚本:マイケル・パートウィー
撮影:スタンリー・ペーヴェー
音楽:スタンリー・ブラック

キャスト
メイリー卿 / テリー・トーマス
マグレガー / ピーター・セラーズ
フローラ / ペギー・マウント
メリッサ / シャーリー・イートン
デニス / デニス・プライス
メイリー夫人 / ジョージナ・クックソン
エセル / ジョアン・シムズ
執事 / ケネス・グリフィス
バステーブル / マイルス・モールソン

日本公開: 未公開
製作国: イギリス アーサー・ランク作品
配給: なし


あらすじとコメント

前回の「労働組合宣言!!」(1959・未)に出演したピーター・セラーズとテリー・トーマス主演の未公開作で続ける。オーバーアクト気味ながらも、セラーズの七変化が存分に楽しめるイギリス映画らしさ満載のコメディ佳作。

イギリス、ロンドンある日、保険会社の役員メイリー卿(テリー・トーマス)のところに、デニス(デニス・プライス)という男がやって来た。彼は記者だと名乗り、これから出版しようとしてる『赤裸々な事実』という雑誌を渡した。

何と、どこで調べたのか、それにはメイリー卿の秘密が書かれていた。しかし、前半は卿の普通の紹介記事であり、最後に暴露記事として「この人誰かな?」のタイトルで、一応は匿名で書いてあった。

驚く卿に、この記事を一万ポンドで買わないかと持ちかけた。しかし、夫人に頭の上がらない彼は、そんな大金は支払えないと答える。では出版します、とにこやかに帰るデニス。

そんな彼は、卿を訪ねる前に女流ベストセラー作家の元を訪れて、同じく脅迫していたのだ。

続いて彼は、人気バラエティー番組の司会者マグレガー(ピーター・セラーズ)の元に現れた・・・

いかにもイギリスらしいシュールでブラックに満ちたコメディの佳作。

紳士然とした男が訪ねた直後、次々と自殺者が出て、彼らが書かれた記事を見て金が取れなかったかと、困惑したように笑顔を浮かべる冒頭。そこからしてブラックな印象が全開。

その男は、石油王と婚約中の美人モデル、大衆文学賞を受賞した女流作家、保険会社の役員、有名タレントと次々に脅迫して行く。

当然、彼らは、それが暴露されては人生の終わりであるのだが、要求額が高額過ぎて、簡単には払えないという展開へと続いていく。

で、モデルは色仕掛けで許しを求め、アガサ・クリスティーを彷彿とさせる女流作家は、牧師との再婚を控えているので、一度は自殺を試みるが失敗。で、思いついたのが何と彼の殺害計画。

そこから、次々と起きる笑いに満ちた展開は、終始、ニヤニヤさせられるし、爆笑をも誘う。

女流作家は老人ホームに勤める一人娘を巻き込み実行に移そうとし始める一方で、有名タレントは執事を巻き込んで、やはり殺人計画を立案して行く。

それぞれがバラバラに勝手な行動をとっていくが、ことごとく失敗していくのが面白く、一体、どのようにこの『複雑なる被害者』たちが絡んでくるのかに興味をそそられる。

あちらとこちらが同じく脅迫されていると知りタッグを組もうとしたり、こちらは別な被害者の存在を知り、仲間に引き入れようと画策する。

ところが、逆にそれが必死に隠そうとしている各々の家族や婚約者に誤解を与えたりと、よくもまあ、これだけ面白おかしく展開させて行くと唸った。

しかし、脅迫者の方が一枚も二枚も上手という設定も面白いし、さてさて、最終的に本当に殺害してしまっては、そこまで転がせておいて、興味を削がれるだろうと思っていたら、またもやヘンな方に進んでいく。

いやはや、個人的には見事にツボにはまり、大爆笑してしまった。まさしく、イギリスの歴史的TV番組「モンティ・パイソン」は、これに相当影響されていると感じるし、割と新しい、地方都市での警官と村民とのトラブルを描く「ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!」(2007)等へ、脈々と受け継がれているとも思った。

セラーズらしい、やり過ぎ感のある変装も面白いし、女流作家と気弱な一人娘の掛け合いや、妻の尻に敷かれる貴族や、毎回、婚約者を許そうと花束とプレゼントを抱えてやって来る石油王の御曹司が、そのたびに別な男がいて誤解せざるを得ないルーティンといった、計算された展開や、それぞれにキャラが立った役を演じる役者も、皆上手い。

ある意味、舞台劇にもなりそうな題材を複数絡め、映画ならではの表現を使って行く。

やはり、イギリス映画は侮れないと唸らされる逸品。

余談雑談 2022年1月15日
二泊三日で入院してきた。一年半もかかってやっと脚の骨折のボルト抜きである。 担当女医さんは、手術前日に来て、手術の翌日に歩ければ帰宅ね、と軽やかに仰る。確かに、大袈裟な手術ではないし、余程じゃなきゃ、失敗はしないだろう。 となると、後は折角