スタッフ
監督:チャールズ・ウォルターズ
製作:アーサー・フリード
脚本:フランセス・グッドリッチ、シドニー・シェルダン他
撮影:ハリー・ストラドリング
音楽:アーヴィング・バーリン、ジョニー・グリーン
キャスト
ハンナ / ジュディ・ガーランド
ヒューズ / フレッド・アステア
ハロウ3世 / ピーター・ローフォード
ナディーン / アン・ミラー
フランソワ / ジュールス・マンシン
マイク / クリントン・サンドバーグ
男性歌手 / リチャード・ビーヴァース
帽子のモデル / ローラ・オルブライト
鉄道職員 / ジョン・オルブライト
日本公開: 1950年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: セントラル
あらすじとコメント
前回がアステア&ロジャースのコンビ解消作。今回は引退していたアステアが盟友ジーン・ケリーの代役として急遽、銀幕復帰した作品。やはりアステアの引退撤回は大正解だったと唸る傑作。
アメリカ、ニュー・ヨーク
コンビのダンサー、ヒューズ(フレッド・アステア)とナディーン(アン・ミラー)。ところがメジャー志望のナディーンが突如、コンビ解消を宣言して旅立ってしまう。
キツネにつままれた態のヒューズの下に友人のハロウ3世(ピーター・ローフォード)が、訪ねてきて慰めようとする。しかし、プライドが高いヒューズは酒に酔い、自分こそが大スターで誰でもすぐにスターに育ててやるとその酒場のコーラスガールのハンナ(ジュディ・ガーランド)に声を掛け、翌朝スタジオに来いと命令した。
驚くハンナだが、意を消してスタジオに行くと、ステージ衣装とは違い、垢抜けない私服ゆえに君は一体誰だとヒューズに言われ・・・
実にチャーミングでMGMミュージカルの良い所取りをした秀作。
自惚れの強いダンサーと田舎出の泥臭い娘の新コンビの成長と恋愛を描く、いわゆるバックステージものの典型作である。
感謝祭の日に二人して着飾って5番街を闊歩しようと懸命にプレゼントを買い求める冒頭のアステアの一人舞踊からして目が釘付けになる。
そこはコミカルさで見せ、続いてパートナーからの別離宣言に翻弄されながらも、何とか解消を避けようと必死にロマンティックなコンビ・ダンスで懐柔しようとする流麗な展開。
軽妙から優雅さと、まったく違うダンス場面でアステアの魅力に鳥肌が立ち絶句した。しかもコンビ解消という設定はアステアとジンジャー・ロジャースに重なる。
それからヒロインと出会うが、彼女歌は抜群に上手いがまったくダンス音痴というオチで始まる。そこはまたガーランドの見せ場で引き込まれる歌唱力に対し、ダンス場面は変調してコミカルだ。
しかし、そこまでで20分と経過していない。実に無駄のない流れで楽曲とダンスも緩急が付いて見事だと唸ってしまう。
内容は新旧のパートナーとの三角関係に主人公の友人である二枚目が絡むという定石通りではある。しかし脇役で人生に達観しているような、いかにものバーテンと実にフレンチ・コンプレックスを連想させるコメディ・リリーフ役の高級レストランの支配人という主役たちを喰ってしまう強烈なキャラクターが登場してくる。
更には見事なるアーヴィング・バーリンの楽曲に振付師から転身したチャールス・ウォルターズのメリハリのある演出で盛り立てる。
エレガントとしか形容しようのないアステアの完璧なるダンス、そしてガーランドの見事なる歌唱力。更に元コンビ役のアン・ミラーのセクシーさとダイナミックさを混在させる踊りなど、全てが見事に絡み合い時間を忘れる愉悦を感じさせる。
それにしても本作撮影中に私生活で骨折し、急遽、直接代役依頼したジーン・ケリーは、仕上がりを見てどう感じたのだろうか。結果として、もはや自分の時代ではないと引退していたアステアの見事なるカムバックをお膳立てしたのだから。
そして本作以降にヴェテランの域に達したアステアの映画履歴は目を見張るものがある。
ただ、逆に面白いのは本作に続いてアステアとジュデイ・ガーランドの再コンビで予定された「ブロードウェイのバークレイ夫妻」(1949)は、ガーランドが精神疾患から降板し、昔の名コンビジンジャー・ロジャースと再共演と相成ったのだから、どこかシニカルでもある。
それでも本作はフレッド・アステアのターニング・ポイントになった作品であり、様々なプロたちの誇りが結集された珠玉の傑作である。