スタッフ
監督：蔵原惟繕
製作：岡田裕
脚本：倉本聰
撮影：佐藤利明
音楽：宇崎竜童、千野秀一
キャスト
本間英次 / 高倉健
竹井夕子 / 桜田淳子
ルチアーノ / フィリップ・ルロワ
水木 / 小林稔侍
ケイ / いしだあゆみ
桂木 / 宇崎竜童
バスケス / トーマス・アラナ
三菱シチズン監督 / 夏木陽介
中沢 / 池部良
氷川 / 大滝秀治
製作国： 日本 ニュー・センチュリー・プロ
配給： 東宝
あらすじとコメント
＜番外編＞はしばらく間が開いていたので、連投的に発行してみる。前回と同じく海外に一大ロケーションした大作。主演は高倉健、監督はやはり海外ロケ大作「南極物語」（1983）で健さんとコンビを組んだ蔵原惟繕で、脚本はこれまた健さんと多く組んできた倉本聰。どこかフランス映画のティストを感じさせるのは原案がジョゼ・ジョヴァンニだからか。
東京
ハードで知られるパリーダカール・ラリーに参加を決めた日本企業「DANKAI」。膨大な資金と熟練のプロが参集しても完走は難しく、まして入賞は厳しいのが現状である。
しかも強力スポンサーは人気タレント吉井竜一（大橋吾郎）をドライバーとして参加させろと無理難題を言ってきた。チームのリーダー格である水木（小林稔侍）は、現在フリーでフィンランドで活動するエンジニアの本間英次（高倉健）の協力が絶対必要だと進言。しかし、日本のしがらみが嫌で飛びだした男だ、説得は困難を極めそうだった。
それでも旧友で上司の中沢（池部良）が現地まで行き説得。結果、サポート・トラックのカミオンで追走することが決まり、現地に向かった。
しかし、吉井の秘密の恋人で大女優の竹井夕子（桜田淳子）がカミオンに隠れて密航していたことから・・・
男たちのロマンと友情や挫折を描く大作ドラマ。
詐欺まがいの方法でかつての上司から参加を強制された主人公。
成程、それこそ「あうん」で不敵に笑って参加を決める姿はまさに仁侠道的発想。何たって依頼側が池部良で相手が高倉健だ。まさに東映の着流しヤクザ映画の態じゃないか。
しかも確かな腕で完全に裏方に徹するプロ。旧知の仲間たちからは絶大なる信用がある。いかにも「待ってました、健さん」と言いたくなる役。
しかも本作では、そんな主人公に惚れる腐れ縁的フランスとイタリア系の仲間二人も登場。そんな二人の仕事はやはりレースに追走し、リタイアや廃車になった車の救助をしたり、後片付けをする「弔い屋」というポジション。その一人と主人公はかつて同じ日本人女性と結婚していた。何とも妙な関係性でもある。
その日本女性をいしだあゆみが演じている。彼女は現在スペイン人闘牛士と三度目の再婚をし、何と現夫と個人参加でラリーに出場。
蔵原演出は手堅く、フィンランド、イタリア、フランスからアフリカと長期ロケしただけあって、画像は綺麗だし観光地紹介とは違うティストが醸されていて見応えがある。
ただし、倉本聰の脚本は高倉健へのあて書きで、いかにも的設定や台詞展開もあるが、本作では失敗していると感じる。
特に、取って付けた印象の若い人気スターと女優の隠れ愛欲関係など邪魔なだけ。確かにそれがあるがゆえに鼻持ちならない若僧がラリーを通して成長したり、女優の方は三度目の再婚をしながら未練持ちの元妻と同様に、陰で見事なるサポート役に徹する主人公に惹かれていくというドラマもあるが、いかにもの印象が勝る。
ヨーロッパ系二人の俳優と高倉の相性は良いし、海外ロケ、特に砂漠の非情さの描き方にマッチして、どこかフランス映画の匂いも立つ。それだけに海外慣れしていないの日本人俳優たちとの落差と温度差が目立つのは減点対象。狭い島国の中で育った俳優たちは、広い海外の街並みや大自然の前では学芸会的演技としてしか認知できない。
つまり国内が舞台の高倉と倉本コンビ作品は安心して見ていけるだけに、特に倉本一家とも呼べる脇役陣はその落差で大地に足がついていない印象が勝ってしまう。それを強調してしまっているのが、いかにもの倉本脚本であるのは事実。
長期海外ロケの大作だけに3時間近い上映時間だが、若いスター二人の存在、主人公のラリー参加までの紆余曲折や、日本国内の芸能界やマスコミ対応の部分を切れば、実に味のある「日本映画」的ではない好印象になったであろうに。
それでも、蔵原演出は見応えがあるのも事実。確かに力作ではある。
