彼奴(きゃつ)を殺(け)せ – UN TEMOIN DANS LA VILLE(1959年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:エドゥアール・モリナロ
製作:アラン・ポワレ
脚本:ジェラール・ウーリー、P・ポワロー、T・ナルスジャック
撮影:アンリ・ドカエ
音楽:バルネ・ウィラン

キャスト
アンスラン / リノ・ヴァンチュラ
ランベール / フランコ・ファブリッツィ
リリアンヌ / サンドラ・ミーロ
ベルディエ / ジャック・ベルティエ
レイモンド / ロベール・ダルバン
ムリエル / ジネット・ピジョン
イタリア人客 / ダニエル・チェカルディ
ジャンヌ / フランソワーズ・ブリオン
ジャーメイン / ミシュリーヌ・ルッチョーニ

日本公開: 1960年
製作国: フランス ゴーモン作品
配給: 東急文化、泰西


あらすじとコメント

御贔屓俳優の筆頭格リノ・ヴァンチュラ。やはり彼は犯罪系映画が似合う。ただし本作は、何とも彼らしくもあり、逆に彼らしくない役柄の不思議なノワール作。

フランス、パリ

不倫相手である人妻を走行中の列車から突き落としたベルディエは、何と証拠不十分で無罪放免となってしまう。

面白くないのは殺された不倫相手の夫アンスラン(リノ・ヴァンチュラ)。元ボクサーで直情型の彼は、ベルディエの家に忍び込み殺害しようと計画。だが、留守なので待ち伏せすることにする。やがて帰宅してきたベルディエはすぐに出掛けるのか無線タクシーを手配した。

その直後、隠れていたアンスランに絞殺され、愛人殺人の罪の意識から後追い自殺したように細工された。

見事、復讐に成功したアンスランは何に食わぬ顔で外にでると、無線で呼ばれたタクシー運転手ランベール(フランコ・ファブリッツィ)と鉢合わせしまい・・・

妻の復讐を遂げた男が追い詰められていくノワール。

妻を殺されて復讐する主人公。ただし、「寝取られ男」側である。

それをリノ・ヴァンチュラが演じる。しかも不器用なイメージの彼らしく、真面目でタフなイメージで押してくる演技。

これを愉悦と取るかミスキャストと感じるかで印象が分かれるだろう。何せ、最初は寝取られ亭主に雇われたプロの殺し屋風情で登場してくるのだ。

しかし、何と亭主本人役。元ボクサーでトラック運転手なのだが、顔を見られたから、そのタクシー・ドライバーを探し出して自分のこと覚えているか確認をしようとするからサスペンスに発展していく。

一方のタクシー運転手は会社の無線係の美女と上手く行きかけて気分上々。当然、何とか彼女をモノにしようと躍起になる。

ヴァンチュラは、そんなドライバーを見つけだし乗車しようとするが別な客に乗られたり、続いては彼女とのデートを尾行したりする。犯人を見たと自ら警察に通報した訳でもないし、目撃証人として事情聴取を受けている訳でもない。なのに何でそこまで運転手に固執するのかは謎。

そして後半でやっと乗車してからは怒涛の展開と相成る。

しかも追う側のメインは警察ではなく、何と無線タクシーの仲間たちなのだ。確かにタクシー運転手は、過去持つ男や心を病むタイプとして描かれることが多いし、日本でも都会の運転手は、事実そんな風情のタイプもいた。

しかも本作では何故か拳銃を所持していたり、かなり強硬な運転で追尾したりするので、それなりのアクション展開で押してくる。

監督は「殺(や)られる」(1959)のエドゥアール・モリナロ。そちら同様、本作も白黒画面の陰影を際立たせるようにモダンジャズが使用される。

しかし、内容は端折り過ぎて辻褄が合わないのも「殺られる」と同じ。何せ、モリナロ監督はこの年、本作と「殺られる」、「ひと夏の情事」と3本も監督している。

B級添え物系監督な印象が勝るのは仕方ないのかもしれない。

結局、このシーンを撮りたいよなとか、ここは派手に行くか、てな感覚で、さあどうだと披露してくるので好き嫌いは別れるタイプだろう。恐らくは好きだという人の方が少ないと思うが。

それでも印象的なシーンやカットがあるので見られないことはないノワール作品。

余談雑談 2024年11月30日
そんな時期になったのか。季節の移ろいに変化が生じて、まさしく秋がない今年。それでも、今頃都心で紅葉と言いだし、一方で最高気温が20度を超える日もあった。この分で行くと年々想定外てな季節変動に見舞われるはずだ。当然、野菜やら秋物ファッションと...