スタッフ
監督:ドニス・ド・ラ・パトリエール
製作:ドニス・ド・ラ・パトリエール
脚本:ミシェル・オーディアール、ルネ・アバル 他
撮影:マルセル・グリニヨン
音楽:ジョルジュ・ガルヴァランツ
キャスト
デュマ伍長 / リノ・ヴァンチュラ
ゴールドマン / シャルル・アズナブール
フォン・スティーゲル大尉 / ハーディ・クリューガー
ジェンサック / モーリス・ビラール
ラミレス / ジェルマイン・コボス
囚人A / ローランド・メレ
大尉の部下 / カルロス・メンディ
囚人B / ジャック・プレボワ
ナレーター / ローランド・メナー
日本公開: 1966年
製作国: フランス フランコ・ロンドン・フィルム作品
配給: タイヘイフィルム
あらすじとコメント
リノ・ヴァンチュラ主演作で続ける。今回は彼としては珍しい戦争映画。個性的な軍人らの砂漠の決死行を描いた戦争アクション。
リビア、トブルク
1942年ドイツ軍優勢の中で必死に戦う自由フランス軍部隊がいた。ドイツ軍の集結地点を攻撃し成功するが隊長は戦死し、生き残ったのは師団所属のデュマ伍長(リノ・ヴァンチュラ)と医師ゴールドマン(シャルル・アズナブール)、他に3人の志願兵のみだった。
一応、伍長が指揮を執ことになるが彼は元ボクサーで頭脳よりは行動派タイプ。一行はジープに同乗し味方陣地へ向かうが、翌日ドイツ軍戦闘機に発見され交戦。撃墜するもジープも大破してしまう。残る道は徒歩で700キロという強行軍のみ。嫌な空気が4人を包む。しかし、進むしかないと励ます伍長だった。
すると途中で休憩中のドイツ兵を発見し、見事奇襲に成功してトラックを手に入れる。だが、近くにドイツ軍将校フォン・スティーゲル大尉(ハーディー・クリューガー)がいて・・・
砂漠で敵味方関係なく協力せざるを得なくなる戦争映画。
タフだが知能は良くない下級下士官が隊長。他にはシニカル思考の医師、元死刑囚、祖母と田舎で暮らしていた世間知らずの男のみ。
本来、医師が冷静に判断しリーダー・シップを取りそうなものの常に斜に構えるペシミスト。更に元死刑囚は誰の命令も聞かず、勝手に機銃を発射したりして仲間を窮地に追い込んでいく。
あくまで隊長は正規兵の主人公。それだって知識もなく場当り的だ。そこに貴族系で頭脳明晰な敵の将校が捕虜として絡んでくる。
捕虜将校は砂漠や車両にも詳しく、足手まといになるからと何かとすぐに射殺しようと言う単純な死刑囚をなだめつつの道行きと相成る。
砂漠を舞台にした戦争映画では、この手の設定は実に多い。つまり過酷な大自然の中で人間は如何に無力かと思い知らされ、どのように克服してしくか。
古いところだとハンフリー・ボガード主演の戦時中の映画「サハラ戦車隊」(1943)は、一台の戦車に敵を含む世界各国の兵士が相乗りして強行軍を強いられる。
他にも、弱音ばかり吐く衛生将校と頼りになるスパイ風情の男が看護師を連れて救急車両で砂漠を行く、個人的にはツボで大好きなイギリス製戦争スリラーの快作「恐怖の砂」(1958)もあり、本作もそれらに通ずる作品である。
しかもフランス映画ということで主軸は、誰からも命令されたくない個人主義の男どもが頼り甲斐のある敵と嫌でも組まないと生き延びられないというシニカルさにある。
当然、ドイツ将校が一枚上手で形勢逆転だって起こり得るしフランス側は失敗すると責任転嫁しかしない面々というのも先読みはしやすい。それでも共通するのは「生き延びたい」ということ。
戦時下でも人間としては当然の本能である。友情めいたものも芽生えたり、個人主義者だが、やはり他人に感化されていくという至極真っ当な展開を見せていく。
夜陰に乗じて敵に紛れ込むとか、地雷原で冷や汗の連続というのも目新しさはない。それでも、様々な砂漠を舞台にした戦争映画を観てきたが、ラストはかなりシニカルだ。
そういえば敵の将校役を演じたドイツ系俳優のハーディー・クリューガーは、本作の3年後に、本作同様にいかにもクールで合理主義者のドイツ人を演じた作品で、不時着した貨物機の生き残りの男たちがいかに砂漠から脱出するか描く「飛べ!フェニックス」(1965)にも出演している。
どちらも全く同じ印象を受けるが 混同しないのは監督の力量と筋運びの妙さの違いだろうか。
ということで本作は邦題のネーミングのセンスから考えても、それなりの作品で可もなく不可もなくという印象ではある。
