減少の一途をたどる好きな飲食店。
それでも嬉しいことに、好きな店から枝分かれして、以後時折だが顔を出すもつ焼き屋がある。自分が通う店では一番の若手たちが営む。とはいっても40歳代だが。
そこの店主は自らゲイだと宣言している。しかもお相手は時々手伝うので二人三脚、というか、ある意味では夫唱婦随か。その他にバツイチの30代のバイトがいる。
贔屓眼か、イメージからかもしれないが、ゲイは各業界で繊細さと大胆さを兼ね備えた実力を発揮する人が多いと感じていて、彼も実に繊細で、本来は大雑把というイメージが強いもつ焼きを見事に調和のとれた上品な代物に仕上げると思っている。
そんな店主が笑って言っていたのが、「俺は差別しないが、俺はヤらないぞ」と言う輩が結構いるとか。全ゲイから押し倒されると思うのかな、と。
こちらはそういう低能さを持つ人間が嫌い。自分を周囲の目よりも上に置き、それなりの上手い冗談だと自惚れて疑わないタイプ。間違いなく、ゲイに限らず男女ともに嫌われるさとも思うし。
それはさておき、その連中がこちらの地元に初詣に来たいと年末に言われて、どこかおススメの店はないかと尋かれた。当然、あるはずもなく。
ナメるなよ、通年通して絶望的に混雑の場所。お参りだけで何時間かかると思うんだと真剣に意見してしまった。しかも、どんな店も長蛇の列で寒さからトイレだけでもと思っても公衆便所以外は無料で貸してもらえないと。流石に驚いていた。
言いきってしまった手前、参拝後は新年会を自室で催すかと。
気を遣って彼らは縁日でたこ焼き、唐揚げ、アユの塩焼きなんぞ持参でやってきた。で、昼過ぎから呑み、楽しんでいると一人が矢鱈とスマホをかざして写真を撮り始めた。
長年放ってある人形やピエロといった装飾物を撮っていたらしく、突然声を上げた。撮ったものをどこかのサイトに投稿すると価格がでて来るらしい。しかも、こちらがいつも利用する映画関連用のオークションサイトとは違うらしい。
いまだにスマホではないので念頭にもなかったが、こちらで値段設定もせずに勝手に価格提示してくれるとは、随分と便利な時代になったもんだと驚いた。
余程楽しいのか、これは3000円、これは5000円とかで売れますぜ、と。一瞬、小金持ちになるとか想像したが、ちょいと待てよと本来の性格が吠える。
もしかして画像データから住所等が特定され、現金こそ所持してないが、いきなりハンマーやバールを持って押込み強盗が来ないかと疑心暗鬼になった。
そう考えると写真を撮ってる唯一ゲイではないバツイチ男の顔が、指南役かリクルーターに見えてきた。
新年早々、一体何を考えてるんだろう。楽しそうな3、40代の奴らを見て、きっと奴らも奴らなりに気を遣ってるんだろうな。
じゃ、お前を信用するから片っ端から売るか。ただし俺は何もしたくないから、売価の四割でアップから入金確認まで一切の手続きでどうかと。
即座に店主に笑われながら怒られた。うちの貴重な戦力を引き抜くんですか、と。まさに、こっちがリクルーターじゃんかよ。
今年も、やはり素直に期待しちゃダメか。