スタッフ
監督:ジョン・フォード
製作:ダリフ・F・ザナック
脚本:フィリップ・ダン
撮影:アーサー・C・ミラー
音楽:アルフレッド・ニューマン
キャスト
モーガン / ドナルド・クリスプ
ベス / サラ・オールグッド
アンハード / モーリン・オハラ
グリュフィード / ウォルター・ピジョン
ヒュー / ロディ・マクドウォール
サイフォース / バリー・フィッツジェラルド
イヴォール / パトリック・ノウルズ
イアント / ジョン・ローダー
ブローウィン / アンナ・リー
日本公開: 1950年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス、セントラル
あらすじとコメント
家族の姿を描いた作品継がり。映画史上に燦然と輝くジョン・フォードの名作中の名作。貧しくもたくましく生きるとある家族を叙情豊かに描いた忘れがたい秀作。
イギリス、ウェールズ
ロンダの谷という炭鉱町にモーガン(ドナルド・クリスプ)一家が住んでいた。肝っ玉母さんという態のベス(サラ・オールグッド)に長男から年の離れたヒュー(ロディ・マクドウォール)までの六男と娘アンハード(モーリン・オハラ)の大家族。
男どもは末っ子ヒュー以外は炭鉱夫として働いている。僅かな給金で汗まみれ石炭まみれで生死を賭けて働く一家だ。
炭鉱主にも一目置かれているモーガンは愚痴ひとつこぼさず黙々と生きている。しかし息子たちは時流に乗り、組合を作って労働環境を変えたほうが良いと言いだす。
当然、反対する家長モーガン。そんなとき新たにグリュフィード(ウォルター・ピジョン)という新任牧師が着任してきた。
その牧師に、娘のアンハードは・・・
家族愛を見事に謳い上げた珠玉の名編。
炭鉱町に生きる貧しい労働者たち。小さなコミュニティながら、皆が仲良しで結婚があれば町民総出で祝うような場所。
ところが、景気の悪化で近隣の鉄工所が閉鎖になり仕事を求め安い賃金で働く者が流入してきたりして、結果、不協和音が響き始める。
続いて主人公一家にも賃金減額に始まり、失業の波が押し寄せてくる。仲の良かった家族だが、長男夫婦と次男はアメリカに出稼ぎに行き、末っ子以外も高賃金らしいと南米ケープタウン、カナダ、ニュージーランドに職を求めて去っていく。
そんな中、将来を考え末っ子だけには学を付けさせた方が良いと判断する家族。何とか大学まで進学させようと必死の努力をするが、折角通いだした優良校で身なりや言動から田舎者として差別されてしまう。
様々な困難が立ち塞がるが、それでも父親は黙って運命を受けれようとする。ところが今度はストが起きても労働者側に加担しなかったことから村八分になってしまう。
そんな亭主を救うのが腹の座った妻である。娘は少しでも家族を救おうと炭鉱主の息子と結婚を決めるが、それすら周囲からすれば搾取側に回ったと誤解を受ける。
健気な娘は、実は牧師に対し淡い思慕がある。今度はそれが騒動に発展したりと。実にドラマティックな展開を見せる進行。
それでも運命を受け入れ、毅然と対峙していく主人公の家族たち。
のどかな田園風景と炭鉱という命の危険が伴う職業。落盤事故が起きれば死者もでる。誰が負傷し、誰が死んだのかは町民すべての心配事になる。
それらにより各々の人生を全うしようと家族がバラバラになっていく。
どこを切り取っても見事な作劇だし、撮影や炭坑内セット、地味ながら役者たちの演技も手堅く見事としか言いようがない。
アカデミー賞で作品賞、監督、撮影、助演男優、美術、装置と6部門での受賞がそれを物語っている。
いかにもアイリシュの血流を誇りとするジョン・フォードらしい気質が如実に表れ、監督の代表作の一本と断言できる秀作中の秀作。
