にがい米 – RISO AMARO(1948年)

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スタッフ
監督:ジュゼッペ・デ・サンティス
製作:ディノ・デ・ラウレンティス
脚本:カルロ・リッツァーリ、C・アルヴァーロ、C・ミュッソ 他
撮影:オテッロ・マルテッリ
音楽:ゴッフレード・パトラッシ

キャスト
グラナータ / ビットリオ・ガスマン
シルヴァーナ / シルヴァーナ・マンガーノ
マルコ / ラフ・ヴァローネ
フランチェスカ / ドリス・ダウリング
アリステーデ / ケッコ・リッソーネ
ベッペ / ニコ・ペペ
アメリア / リア・コネッリ
チェレステ / アドリアーナ・シヴィエーリ
ガブリエラ / マリア・グラシア・フランチャ

日本公開: 1952年
製作国: イタリア ルクス作品
配給: イタリフィルム、松竹洋画部


あらすじとコメント

今回もジュゼッペ・デ・サンティス監督でラフ・ヴァローネが出演する作品。厳しい環境下で働きざるを得ない女たち。悲劇が連鎖していく姿を描くネオ・リアリズモ映画の一本。

イタリア、ピエモンテ

5月初旬、この時期になると北イタリア各所から米の収穫に多くの女性たちが集まってくる。

彼女らは手作業での収穫に続き、新苗の田植えシーズンが終わる約40日間住み込みで働くのだ。

各方面からの到着列車でごった返す中に、ホテルで高級宝石を盗んだグラナータ(ヴィットリオ・ガスマン)と彼の愛人フランチェスカ(ドリス・ダウリング)が素知らぬ顔で紛れ込んでいた。しかし運悪く張り込んでいた警察に発見され、グラナータは必ず迎えに来ると愛人を言い含め単独で逃げ去った。困惑する彼女に闊達で熱情型のシルヴァーナ(シルヴァーナ・マンガーノ)が声をかけてきた。当然彼女が労働許可証を持たぬ人間だと知ってのことだ。

他にも多くの不法就労女性が潜り込んでいた。雇用側の監督官や口入屋は人手確保のために黙認して雇用している。何故ならそんな彼女たちには正規賃金を払わなくて済むという魂胆からだ。

困惑するが情人が迎えに来るまで待たざるを得ないフランチェスカは従うしかなかった。そんな二人は除隊間近で隣接地にキャンプを張るマルコ軍曹(ラフ・ヴァローネ)と知り合い・・・

出稼ぎ労働女性たちのストレスと女に群がる男たちを描くドラマ。

色男で悪党の情人に宝石を託され水田地帯で不法労働者として働きざるを得ない都会の女性。彼女の隠し持つ宝石を認め、近付いてくる情炎の女。

前半は集められた女性たちの立場向上の労働運動的行動や、諦念している小さな子供連れの戦災未亡人や自律神経を病んでいく女性といった人間たちの劣悪な環境下での労働が描かれていく。

成程のネオ・リアリズモである。ただし、珍しいのは登場人物が女性ばかりで、尚且つ逞しいという点。

そこに情人が密かに戻ってきて、精米掠奪を考えていた監督官らを言い含めリーダー格となって更なる大計画を遂行しようとしていく展開。

一方の隣接でキャンプを張る真面目な軍曹は都会的女性を気に入るが、どこか引っ込み思案で前に進めない。

そもそも都会的女性は情人から離れられないので、無理でしかないのだが。しかも、もう一人のグラマーで熱情型女性は、やはり情人に惹かれ、篭絡しようと挑発的言動をとり、奇妙な関係性が築かれていく。

いかにも色男の小悪党が二人の女性を篭絡していったり、両極の女性側も都会的でやせ型の洗練された方は、そもそも田植えなどに向いているはずもない。結果、折角の美貌が台無しになっていく。

一方でグラマーな女性は腋毛も剃らず、大胆な踊りや立振る舞いで男たちに取り入っていく。

要は両極端の女性二人が情人を奪い合う展開で、そこに真面目な軍人さんが絡み四人の関係性がねじれて行く。

何といっても肉体派でダンスも上手く、いかにも男たちがそそられる態の下品なエロテックを発散するシルヴァーナ・マンガーノの存在が圧倒的である。

彼女在っての都会派女性と情人らとの対比だと感じる。

むさくるしい劣悪な環境下でのドラマ進行から、やがて田植え終了のお別れパーティーで労働女性と近隣男性たちの恋の道行きがあったり、楽しいはずの会が悲惨な方へと転がっていく展開など、流石の敗戦国イタリアの映画だと見入った。

女たちの重労働の賃金は精米が殆どであり、それでも又、来年も皆でここで再会しょうと笑い合ったりする中で、何とも嫌な方へ行くのがわかり、本来結婚式で新郎新婦に投げられる「ライス・シャワー」が別な意味を持つと知って哀しさが倍増した。

貧しさと逞しさとそれでも愛欲をも忘れない女性たちの恐怖すら感じさせる人間ドラマの佳作。

余談雑談 2025年6月28日
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