コルドラへの道 – THEY CAME TO CORDURA(1959年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ロバート・ロッセン
製作:ウィリアム・ゲッツ
脚本:アイヴァン・モファット、ロバート・ロッセン
撮影:バーネット・ガフィ
音楽:モリス・ストロフ

キャスト
ソーン少佐 / ゲーリー・クーパー
アデレード / リタ・ヘイワース
チョーク軍曹 / ヴァン・へフリン
トルビー伍長 / リチャード・コンテ
ファウラー少尉 / タブ・ハンター
レンチハウゼン兵卒 / ディック・ヨーク
ヘザリントン兵卒 / マイケル・カラン
ロジャース大佐 / ロバート・キース
デローズ大佐 / エドワード・プラット

日本公開: 1959年
製作国: アメリカ ウィリアム・ゲッツ・プロ作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

メキシコに越境してきて苦悩する主人公。今回はアクションも少なめで、どこかアメリカン・ニュー・シネマ的ティストのある人間ドラマ。

メキシコ、オホスアセーレス

1916年、戦争にも近代兵器の複葉機や自動車が使用されだした頃。メキシコで革命軍が蜂起しアメリカにまで越境し掠奪と殺戮が起きた。当然、アメリカは陸軍をメキシコに派遣し革命軍殲滅を図る。その中に極秘任務として受勲対象者を見つけだし、表彰させるべくコルドラまで同道せよとの命を受けたソーン少佐(ゲーリー・クーパー)がいた。それには嫌でも戦闘に参加しなければならない。

彼が同行参戦するのは、直属上司で目をかけてくれたヴェテラン大佐が率いる作戦で、革命軍に協力するアメリカ女性アデレード(リタ・ヘイワース)が営む農園での戦いである。前時代的な騎兵特攻作戦だったが、結果数名の英雄的行動で勝利を収める。そしてファウラー少尉(タブ・ハンター)、チョーク軍曹(ヴァン・ヘフリン)、トルビー伍長(リチャード・コンテ)ら5名を密かに選出するソーン少佐。

彼は特別任務が下ったと5名、及び国家反逆罪と称してアデレードも連行し、コルドラまで行くことにするが・・・

英雄的行動の光と影を探る自分探し的道行。

隠しておきたい恥ずべき行為がある主人公。上官から特段の温情で秘密を隠匿し英雄表彰の対象者を探せと特命を受ける。

ただし、上官は昔気質といえば格好良いが自分こそ英雄で受勲されたいと願う、精神論と過去の勇壮な突撃スタイルでしか策を持たぬ老人。

何とも嫌な出だしである。無謀な作戦ながら部隊内数名の英雄的行動により成功。

実は主人公は選出者たちに英雄的発想や行動についての心理と真実を聞き出したいと思っている。それは自分を鼓舞し過去からの脱却への期待でもあるようだ。

売国者として連行を命じられるヒロインは、スキャンダルまみれの金持ち上院議員という父親を持つ、成金の跳ね返り的美人。ゆえにアメリカから逃げてきたのだ。ただし論理的な策士でもあるから手が焼ける。

実にややこしいタイプの主人公2人に、当然、実は英雄たちも裏がある問題人間ばかりだと解って来る。

メキシコ反乱軍の襲撃もあるが、そこで全員の脆弱さが露呈され、何とも嫌な印象を与えてくる。

以降、主人公の身勝手な自分探しというか自己詭弁の正義感を隠しながら、勝ち気で知的なヒロインや、主人公の過去の秘密を知る隊員もいたり、ほぼ誰にも気持ち的に肩入れできないという、何とも嫌な展開と進行で押してくる。

アクション系王道西部劇を期待すると、ひねり過ぎた内容に完全なる肩透かしを喰らい、カタルシスの持って行き場のない閉塞感に圧し潰されそうになる人もいるだろう。

それぐらい何とも嫌な内容であり、「英雄」など周囲が周囲を鼓舞するために利用する対象であり、素直に英雄に憧れる単純な国民を蔑んでいると感じさせる。

しかし、大スターであるゲーリー・クーパーが良くぞ本役を引き受けたと驚く。それにも増して本作後に、人間の脆弱さを際立たせた裏社会の輩ばかりが登場する佳作ドラマ「ハスラー」(1961)を撮るロバート・ロッセンのイヤらしいまでの絶望的人間観と善なる個性など持ち合わせる人間は生き残っていけないという突き放した視線に徹した作劇は好き嫌いは別れようが、妙に鋭い。

ある程度のハッピーエンドを予感させつつ、絶対に幸せな将来など待ち受けていないであろうと鳥肌を立たせるラスト。

結局、自分探しなど周囲の迷惑は関係なしに『自己中心的な身勝手』であり、だから個人の国アメリカの病巣は時代が変わろうと脈々と流れ続け、真の『英雄的自己犠牲』など存在しないと印象付けてくる。

個人的価値観の自由と責任を嫌というほど思い知らされ、それでも自由を標榜し続けて行く限り、人間の弱さに終焉などあり得ないと教えてくれる。

実に後味のよろしくない人間ドラマ。

余談雑談 2023年7月22日
「納得がいく」と「あきらめがつく」の境。 街歩きをしていて、不意に佇まいが好みの『喫茶店』を発見した。かなり前からあるような雰囲気で『自家焙煎』を謳い、入り口横に年季の入った焙煎機が見えた。昭和ぐらいからありそうな雰囲気で、妙に感性アンテナ