スタッフ
監督:ハリー・ワット
製作:マイケル・バルコン
原作:インマン・ハンター、リー・ロビンソン
脚本:ハリー・ワット、ジョン・クリアリー
撮影:ゴードン・ダインズ
キャスト
カーク / アルド・レイ
刑事 / フレッド・アボット
アン / ヘザー・シアーズ
バート / ヴィクター・マダーン
ジョニー / ニール・マッカラム
フルトン夫人 / バーバラ・ミューレン
フルトン氏 / ゲイリー・ダガン
ハンナ警視 / カルロ・ジュスティーニ
警察長官 / ケネス・J・ウォーレン
日本公開: 1960年
製作国: イギリス イーリング・フィルム作品
配給: RKO
あらすじとコメント
タフな役どころが多いアルド・レイ。今回も珍しく彼が主役のアクション編。そもそも彼を特集して取り上げる機会など、ほぼあり得ないので続けてみる。B級ながら、オーストラリアが舞台とはいささか珍しい気もする。
オーストラリア、シドニー
傷害罪で服役中のカーク(アルド・レイ)が、ヤクザのバートとルーク、そして堅気の弟ジョニー(ニール・マッカラム)の手助けで脱獄した。
緊急捜査網が敷かれ新聞でも報道されるが、何とか隠れ家に逃げ込んだ。夜まで待つと小型ボートを盗んで湾外でようとした。ところが航路を誤り座礁。近くの小島ピンチガットに漂着した。
そこは対敵用の大砲が設置されたデニソン砦がある小さな観光島で、管理人のフルトン夫妻と一人娘アン(ヘザー・シアーズ)だけが住んでいた。
カークらは家族を人質に取り、別の小型船を盗み更なる逃亡を図ろうとする。しかし、島の様子がおかしいと気付いた水上警察員が来島してきて・・・
小島に立て籠った犯罪者と管理人家族を描くクライム・アクション。
重症人として救急車で脱獄した主人公。先ず白バイ警官に呼び止められるサスペンスに始まり、一応次々と難関が起き、最終的に小島に漂着。
そこにいることが発覚し、当然「袋の鼠」状態に陥る。
そこからが何とも面白い展開となっていく。シドニー湾には全長1キロを超えるハーバー・ブリッジが架かっており、島はその内側にある。
湾内には弾薬輸送船が停泊中で、そこをめがけ大砲で撃つと言いだす主人公。
もし命中すればシドニーの半分は壊滅状態になる。そして何とも面白いのは主人公の要求である。通常なら脱出用艦艇だろうが、裁判のやり直しを要求するのだ。
当然、市長や警察、裁判所まで絡んで対応するが、念のためにとシドニー市民への退避命令が発動される。
一方の籠城犯側は大砲用の薬莢はあるが実は弾頭がなく、城塞地下の倉庫にあるが鍵がないという状況。ならばと力付くで壊しにかかるという何ともB級設定。といっても御都合主義よろしく、電気ドリルや便利で破壊力のある器具などない。
B級らしいが、それでも観ていけるのは製作者がマイケル・バルコンであること。彼は劇映画とドキュメンタリー映像を癒合させた『バルコン・タッチ』と呼ばれる作劇法を生みだした御仁。
その代表作の一本で、やはりオーストラリアを舞台にしながらアメリカとは全く違うティストで牛の大群の移動(キャトル・ドライブ)をサスペンスフルに描いた名品「オヴァランダース」(1946)の監督ハリー・ワットが本作も手掛けているからだ。
シドニー市民の避難シーンはイギリス映画史上の秀作で 老原子力科学者が小型原爆を持って失踪し、七日後にロンドンで爆発させると脅す「戦慄の七日間」(1950)を小規模ながらも彷彿とさせて手際が良い。
舞台がオーストラリアであり主役がB級のアルド・レイだし、脇役も無名の人ばかりなので完全に埋もれてしまった小品だが、随所に妙味のある内容で忘れ去られるには惜しいと感じさせる力作。


