スタッフ
監督: オットー・プレミンジャー
製作: オットー・プレミンジャー
脚本: J・ドライトラー、S・ホファースタイン、B・ラインハルト
撮影: ジョセフ・ラッシェル
音楽: デヴィッド・ラスキン
キャスト
ローラ / ジーン・ティアニー
マクファーソン / ダナ・アンドリュース
ライデッカー / クリフトン・ウェッブ
カーペンター / ヴィンセント・プライス
アン / ジュディス・アンダーソン
ベッシー / ドロシー・アダムス
マクヴィティ / ジェームス・フレイヴァン
ブリット / クライド・フィルモア
キャラハン / ラルフ・ダン
日本公開: 1947年
製作国: アメリカ 20世紀フォックス作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
今回もオットー・プレミンジャー監督作品。しかも、前回扱った「危険な道」(1964)で、どちらかというと悪役的な登場をしたダナ・アンドリュースが、別な一面を見せる役で出演している。
アメリカ、ニュー・ヨーク。マクファーソン刑事(ダナ・アンドリュース)が、コラムニストのライデッカー(クリフトン・ウェッブ)の部屋を訪れた。数日前に顔面を散弾銃で撃たれ、死亡したローラの件でだ。自分は被疑者か と笑うライデッカー。不敵な笑みを浮かべるマクファーソンに、捜査への同行を申しでる。また、不敵に笑うが拒否しないマクファーソン。
続いて、二人はローラの叔母アンの部屋を訪れる。どうやら、その叔母はカーペンター(ヴィンセント・プライス)という男にかなりの金を貢いでいる模様だった。適当にはぐらかす叔母。そこへ、寝室からでてくるカーペンター。笑みを浮かべるマクファーソンに彼は言い放った。
実は、自分はローラと今週結婚するはずだった・・・
ひねりの効いたミステリー作品。
キャリア・ウーマンとして伸し上がってきた美人。ただし、取巻きの人間たちは皆いわく有り気である。当然と言えば当然。本作はミステリーであるからだ。しかも、当時としては、斬新な設定でもある。
原作は1942年に発表された女流作家ヴェラ・キャスパリによるもの。つまり、第二次大戦が既に始まっていた時期である。
主人公の女性は、アメリカでもキャリア・ウーマンのはしりという設定である。ニュー・ヨークという流行の最先端の街を舞台に、絶大なる人気と実力を持つコラムニストや、昔でいう『ツバメ』、今なら『ヒモ』とも呼べる男などが登場する。
しかも、刑事も通常はコンビで行動するが、本作ではひとりで私立探偵よろしく行動するというかなり大胆な設定でもある。
で、映画は、中盤から突然、変調する。その展開には驚いた。今では、ある種、あり得ない設定だからである。
ここに否が応でも、時代を感じた。当時は、斬新であり、意外性に富んだ筋運び。ただし、あくあまでも『当時』としては、である。
時代は目まぐるしく変わった。昔の映画が好きで、様々な年代の色々なジャンルの映画を見てきた人間にとっては、この設定や作劇は、どこかで見たことがあるぞと感じる人も多いだろう。
逆に、この手の展開から派生したパクリすら、既に大時代がかり、古色蒼然とし過ぎて忘れ去れた感がある。だからこそ、もしかしたら目新しさを感じる人がいるかもしれない。
本来あった社交界とも違う。かといって、単純に貧乏人から金を儲け、立身出世した人間たちのアメリカン・ドリームとも違う。同じくコラムニストが重要な鍵を握る展開の「イヴの総て」(1950)での、ショウ・ビジネスの世界でもない。
絶大なる人気と影響力のある知識人としてのコラムニストや最先端のファッションを着こなし、趣味の良い豪華アパートメントに住むキャリア・ウーマン。しかも、広告代理店という職種。
ニュー・ヨークが憧れの場所であると確信できる設定である。そんな設定で起きる殺人事件。絡むのは、タフだがスマートさがある刑事だ。
謎解きよりも、流麗な白黒のカメラ・ワークや、登場人物たちのファッションなどを楽しみながら見る方がスマートな鑑賞スタイルかもしれない。
強烈に面白いという作品ではないが、以後、様々なジャンルに影響を与えた作品ではある。