スタッフ
監督:アンドリュー・V・マクラグレン
製作:イアン・ロイド
脚本:レジナルド・ローズ
撮影:ジャック・ヒルドヤード
音楽:ロイ・バッド
キャスト
フォークナー大佐 / リチャード・バートン
フィン / ロジャー・ムーア
ヤンダース / リチャード・ハリス
コエジー / ハーディ・クリューガー
マターソン卿 / スチュワート・グレンジャー
リンバニ / ウィンストン・ヌショア
サンディ特務曹長 / ジャック・ワトソン
ウィッティー / ケネス・グリフィス
ジョック / ロナルド・フレイザー
日本公開: 1978年
製作国: イギリス イアン・ロイド・プロ作品
配給: 松竹、ジョイパック、富士映画
あらすじとコメント
志を持ちながらも、金で動くプロたち。そこにはどこか負け犬の美学を感じ取ることがある。今回はそういった男たちの集団だ。
1969年イギリス、ロンドン。大銀行家のマターソン卿(スチュワート・グレンジャー)が、指名手配中の元軍人フォークナー大佐(リチャード・バートン)を秘密裏に呼んだ。
2年前に死んだと思われていたアフリカ某国の指導者リンバニの生存が確認されたというのだ。マターソンはその国の銅山の採掘権を持っていたが、現軍事政権に取り上げられ膨大な損失をだしていた。そこで再度、利権を掌中に収めるべくリンバニ救出作戦を決め、フォークナーを呼んだのだ。フォークナーは引き受けるが、 旧友で作戦立案のプロ、ヤンダース(リチャード・ハリス)と名パイロットのフィン(ロジャー・ムーア)の参加が条件だと付け加えた。しかし、ヤンダースは浮気性の妻に逃げられ10歳の息子と隠居生活を送っており、方やフィンは麻薬を巡るトラブルでマフィアに追われていた。
何とか諸問題を解決し特攻隊メンバーを募るフォークナー。50名のメンバーが決まり、猛訓練を受けた後、いよいよ作戦決行となる。結果、ヤンダースの見事な計画で負傷者もださずにリンバニ救出に成功した。しかし、彼らをピックアップするはずの飛行機が彼らの面前で引き返してしまう。何と軍事政権と手を組んだマターソンが裏切ったのだ。
敵地の真っ只中で、心臓病を患っているリンバニを抱えたまま、放りだされた一行は・・・
傭兵という正規軍でない男たちが辿る過酷な運命を描く異色の戦争映画。
西部劇から二番煎じのアクションや戦争映画ばかりを撮り続けたアンドリュー・V・マクラグレン監督が最後に煌いた力作でもある。
主義主張のために戦う者もいるが、金のために雇われ、俄か軍隊に参加する若者。また、かつては第二次大戦の勇者だったが、平時には社会に馴染めず役に立たない中年男たち。そういった男たちが見ず知らずの人物を助けるため、未知の国に行く。
大義を胸に持つ者は幸せだ。しかし、そんな若者はひとりしかいない。他の男たちは全員が負け犬感に苛まれ、戦場でこそ生きる実感を味わえると痛感しているのだ。だから、本作に爽快感はない。単純な戦争映画とは完全に一線を画している。
一人息子と静かに生活したいと願う副官は、体も鈍っているし頭脳も衰えたとため息をつく。南アフリカ出身で元警官の白人は黒人を忌み嫌っている。しかも救出するのは自分より数段知能が高い黒人政治家だ。また、かつての上司の出現に家族を棄て、否応無く従順する元下士官。犯罪者になった者やヒモのような自堕落な生活を送る者。
そういった異端児たちが自分の居場所を見つけたとホッとする。しかし、彼らは金に裏切られるのだ。
救出作戦が見事だったがゆえに、見捨てられた後の展開は胸が締付けられる。正規軍でないため誰にも援助を要請できない。当然、かつて非人道的な戦闘をしたために、彼らに恨みを持ち続ける者もいる。
嫌な閉塞感と絶望感が全編を覆っているのだ。だから、本作を嫌いだという戦争映画ファンもいる。しかし、主役四人の他にも、どこぞの戦争映画で何度も顔を見た俳優たちが歳をとり、くたびれ果てた風情で頑張る。
自分はそういった彼等に素直に感情移入した。それはレジナルド・ローズが脚本に参加しているせいもあるだろう。彼は、生涯のマイ・ベストテンには必ず入る「十二人の怒れる男」(1956)で、人の生死を決定する陪審員たちの人間としての強さと脆弱さを描破した人物像を書き上げた脚本家だ。その見事なまでの人間洞察力に酔った作家が、再度、感情を揺さぶる群像劇を書いた。
負け戦に命を賭けていく男たち。そこには負け犬だからこその生きる歓びと達観した死生観がある。
確かに作劇など全体のバランスを考えれば傑作とは呼べまい。
だが、大好きだ。