スタッフ
監督: スタンリー・ドーネン
製作: スタンリー・ドーネン
脚本: ノーマン・クラスナー
撮影: フレデリック・A・ヤング
音楽: リチャード・ロドニー・ベネット
キャスト
アンナ / イングリッド・バーグマン
アダムス / ケーリー・グラント
マーガレット / フィリス・カルヴァート
マンソン / セシル・パ-カー
ドリス / メッグス・ジェンキンス
カール / デヴィッド・コソフ
フィンレイ / オリヴァー・ジョンソン
ウィリアム / フランク・ホーキンス
チャールス / デヴィッド・クート
日本公開: 1958年
製作国: アメリカ グランドン・プロ作品
配給: ワーナー
あらすじとコメント
前回の「めぐり逢い」で二枚目振りを見せ付けたケーリー・グラント。そんな彼がお茶目な一面を見せた大人のロマンティック・コメディ。
イギリス、ロンドン。世界的に有名な舞台女優アンナ(イングリット・バーグマン)が公演を終え、帰宅した。今回を最後に公演旅行を止め、しばらくはゆっくりしようと思っていたのだ。
そこへ、口うるさい姉のマーガレット(フィリス・カルバート)と夫のマンソン(セシル・パーカー)が突如やって来る。いつまでもたっても結婚しないアンナの現状を探りに来たのだ。また姉の身勝手なお節介が頭をもたげてきたと感じた彼女との間に喧嘩が始まってしまう。今度はそこへ、ひとりの紳士がやって来る。彼の名はアダムス(ケーリー・グラント)。NATO職員で、晩餐会で演説を行うためにパリからやって来て、マンソンが着替え場所としてここを紹介したのだった。アンナは素敵なアダムスに一目惚れしてしまう。それに気付いたのか、彼も彼女に興味がある素振りを見せるが、突如、自分には別居中だが妻がいると告白。複雑な心境になるアンナ。
しかし、それでも恋の熱情に負け、付き合い始めてしまうアンナ。そのことを知って、今度は心配し始める姉夫婦。
だが、ある日、マンソンが偶然、アダムスの秘密を知ってしまって・・・
洒落たセンスが満載の大人のラブ・コメディ。
いかにもブロードウェイの劇らしい洒落た会話がふんだんに散りばめられ、見ていてクスクスと笑ってしまった。
主役のグラントは、いかにも小洒落たプレイボーイを嬉々として演じ、彼の十八番的役どころだ。一方のバーグマンも実に上手い。彼女は、どちらかというと悲劇的な役どころを演じることが多かったが、コメディエンヌとしても堂々としていながら気品があり、惚れ惚れと見入ってしまった。
事実、彼女は本作の前に「追想」(1957)で、「ガス燈」(1944)に続き、二度目のアカデミー主演女優賞を獲った後で、脂が乗り切っていた。
それに主役二人は二度目の共演である。一回目はヒッチコックの「汚名」(1946)。方や、ケレン味たっぷりのスリラーで、こなた、ラブ・コメディである。全然、作劇が違うが、どちらとも二人して実にハマった役どころであり、やはり、上手い役者は違うと感じ入った。
ストーリィとしては、オトナの男女それぞれの身勝手ないやらしさと素直さが入り混じり、ハラハラ感も相まって面白く展開していく。
とはいっても不倫ドラマと思ったら、大間違い。あくまでも本作はコメディ。本人も自覚したプレイボーイが恋の主導権を握ろうとする。しかし、相手は実力派舞台女優だ。『キツネ』と『タヌキ』の化かし合いのような進行を見せていく。観客はそれを知っているから、おかしくて笑ってしまうという仕組み。
監督は当時、まだ新人のスタンリー・ドーネン。ミュージカル出身で、舞台劇の映画化はどうかと思われていたが、中々、どうして上手い演出をしている。後年、「シャレード」(1963)や「いつも2人で」(1967)など、ミュージカル以外でも才能が発揮されているので、ご納得のファンもいるだろう。
しかし、本作で一番のツボは、ミュージカルとまではいかないが、舞踏会のシーンだろう。ここで監督の音楽的才能が見て取れる。あのグラントにおかしな踊りを踊らせるのだ。しかも、その場面では彼は知らないが、バーグマンの腹芸に踊らされているという設定だから、益々おかしい。
主題歌もイイ感じだし、バーグマンが着る衣装はクリスチャン・ディオ-ル、ピエール・バルマンにランバンのデザインのもの。グラントだって、タキシードから燕尾服を当然のように着こなす。
大人の着こなしから立ち振る舞いの勉強にもなるし、一方で、大人と言えども子供じみた悪戯心がいっぱいという洒落た感覚も堪能できる。
傑作とは呼べまいが、美男美女とて同じ人間と思えるコメディ。