狙撃   昭和43年(1968年)

メルマガ会員限定

画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:堀川弘通
製作:貝山知弘
脚本:永原秀一
撮影:長谷川清
音楽:真鍋理一郎

キャスト
松下徹 / 加山雄三
小高章子 / 浅丘ルリ子
片倉譲二 / 森雅之
深沢 / 岸田森
花田 / 藤木孝
安部 / 河合伸旺
李康生 / 小沢昭一
バレンチナ / サリー・メイ
今野 / 笹岡勝治
山際 / 船戸順

製作国: 日本
配給: 東宝


あらすじとコメント

和製ノワール作品。映画界が斜陽になり、人気絶頂だった加山雄三も陰りが見えた頃に製作された作品。こだわりを強く感じさせる作劇のドラマ。

東京

日曜の早朝、丸の内のビルの屋上にひとりの男がいた。松下(加山雄三)だ。

彼は煙草に火を付け一服すると紫煙の流れを読み、すぐさま消して吸殻をポケットに入れた。そして手元の無線機から、直後に予定されている指令の決行有無の連絡が入る。彼は静かにライフルを構えるとビルの影から走ってきた新幹線に照準を合わせた。そしてターゲットが見えた一瞬、一発の弾丸を放った。見事に命中し、寝込むように倒れるターゲット。何事もなかったかのように立ち去る松下。

翌日、素知らぬ顔でクレー射撃場に行くと撮影に来ていたファッションモデルの小高章子(浅丘ルリ子)に声を掛けられて・・・

クールな殺し屋同士の対決を描くノワール作品。

無口で表情も変えずに殺人を実行するマシンのような男。そんな異彩を放つ主人公に一瞬にして魅入られる美人モデル。

何故か意気投合し付き合うようになる。そんな主人公に新たに海上で受け渡される金塊の横取りを企む一団からの応援依頼が来る。

依頼を受け強奪に成功するが、当然相手側も一団を特定し反撃に来るという展開。

しかも、相手は主人公よりも格上の凄腕殺し屋を雇っているのだ。

やがて互いが血を血で洗う闘争になるというのがストーリィなのだが、それ自体は陳腐。妙に観念的な台詞とか、凝ったカメラワークとかで鼻白む。

それよりも本作は製作側の意図は完全に別にあると感じる。

冒頭の新幹線の乗客を狙撃するシーンでストイックに完璧遂行する描き方は、完全に孤独な中年の殺し屋を描いたイタリア映画の佳作「殺しのテクニック」(1966)の模倣。

以後も銃を愛でるように扱い、実際の女性よりも愛していると思わせたり、主人公の学生時代からの親友で米軍基地の側で銃砲店を営む男の存在など、何とも無国籍風。

ヒロインがモデルであるということで最先端のオシャレな部屋に住んでおり、蝶のコレクターで激情型でありながらクールさを放つという異色性を際立たせる。ただし、二人のシークエンスはどれもクロード・ルルーシェの秀作「男と女」(1966)そのもの。

つまり、どれもこれも総てがヨーロッパ系、特にフランス映画を完全に意識した作劇なのだ。

敵役になる森雅之はダブルのスーツを着こなし、金髪女性を連れていていかにもフランスの香り漂うような演技を披露。銃砲店を営む友人の岸田森の存在も加山以上で妙味があるし、銃器の描き方などかなり細かく興味深い。

それぞれがそれぞれの分野で熱を込めて作っているのが分かる。

主人公が乗る車もトヨタ2000GTだし、音楽だってジャズ系で実にモダンな印象。

兎にも角にも日本映画から離れようとすればするほど、逆に無国籍で荒唐無稽さまで醸してしまっているとも感じさせる。逆にそう見る側を誘導するのも製作サイドの意図なのだろうが。

個人的には製作された時代の東京の風景には憧れを禁じ得ないのは、作品としては大したことがない内容にしても、時間経過と共に、それなりに熟成され、ひと回りして逆に新しさを得たということでもあろう。

それだけで、本作の存在理由があるということでもある。

余談雑談+ 2025年1月11日
今回の都々逸。「取れば小さくわたしと言って 黙る電話の凍る夜」ホラーですな。間違いなく昭和時代の作品だし、今では電話も携帯できるので、俗にいう「家電(いえでん)」。つまり家庭用の固定電話ってことですよね。どう思うかそれぞれだろうが、受け手の...