スタッフ
監督:ジョン・ヒューストン
製作:C・デ・ヘヴン三世、S・ワイゼンタール
脚本:グラディス・ヒル、ジョン・ヒューストン
撮影:ラッセル・ダラスニン
音楽:黛敏郎、ロバート・ドラスニン
キャスト
エリカ / ビビ・アンデルセン
ウォード / リチャード・ブーン
ザ・ホァー / ナイジェル・グリーン
コスノフ大佐 / マックス・フォン・シドー
ソフィー夫人 / リラ・ケドロヴァ
ローン / パトリック・オニール
提督 / ジョン・ヒューストン
プレスナヴィッチ / オーソン・ウェルズ
ワーロック / ジョージ・サンダース
日本公開: 1970年
製作国: アメリカ カーター・デ・ヘヴン作品
配給: 20世紀フォックス
あらすじとコメント
ジョン・ヒューストンは監督もするし出演者としても活躍してきた。今回はその双方で参加した米ソ冷戦下での非情なスパイ活動を描く作品にしてみる。複雑な内容ながら、上手くまとまった映画。
フィンランド、ヘルシンキ
米ソ冷戦下の時代。西側とソ連の間で交わされた対中国に関する密約書簡が行方不明になった。その密書を取り戻すべく、ソ連に長く潜入していたアメリカのスパイが奪取に失敗し、厳しい拷問に耐えかねて自殺する案件が発生。
アメリカはすぐさま海軍将校であったローン(パトリック・オニール)を情報部に引き入れ代行任務に就かせようと訓練を始める。上司となるのはウォード(リチャード・ブーン)と呼ばれるヴェテラン・スパイ。
ローンは手始めに潜入チームを編成するため、各々が暗号名を持つスパイの招集を命令される。その誰もが一筋縄ではいかないタイプばかり。
それでも何とかメンバーを集めソ連領内に潜入。活動の結果、仲間を自殺に追い込んだのが情報部長のコスノフ大佐(マックス・フォン・シドー)だと特定確認できた。
更に大佐自身が高等政治局員ブレスナヴィッチ(オーソン・ウェルズ)との間に確執があることも突き止め・・・
非常な世界に生きる人間たちを冷徹に描くサスペンス・ドラマ。
いきなりスパイにさせられる愛国者。既に現場から離れて生活する各分野のエキスパートであったかつてのスパイを集めさせられる。ところが一人は病気で復帰不可だが、自分以上に才能があると若い娘を紹介してきたりする。
困惑するが、その分野のプロもいなければ作戦実行は不可能。その若い娘と惹かれ合ったりするからややこしくはなる。
とはいっても、それは些細なことだと進行するのも面白い。
ソ連側も権力闘争があり、情報部の大佐は冷徹で容赦のない性格だが美人妻には必死にそれを隠していることが判明してくる。当然、そこが西側も敵対局員も付け込むウィーク・ポイントになっていく。
ヒューストン演出は骨太で、絡み合う人間模様や入り乱れる情報戦を混乱することなくクールに突き放しながら進行させていく。ヴェテランの味わいが漂い、寒いソ連内という環境が冷たさを際立たせていく。
主役の新入スパイ役のパトリック・オニールも分をわきまえた抑えの演技で好感が持てる。西側のスパイ仲間もイギリス系のヴェテラン俳優ジョージ・サンダース、ナイジェル・パトリック、アメリカのヴェテランであるクセの強いリチャード・ブーンやらディーン・ジャガーといった往年の映画ファンなら唸るキャスティングである。
要は演技力がしっかりとして、逆にスター的な華がないからこその妙なリアリティを感じさせるキャスティングと呼べる。
内容も過酷なスパイ活動を描き、出し抜いたり、出し抜かれたりのシーソー・ゲームで妙味あり。
実力派が揃った作品だが、地味さが圧倒的に勝るので公開当時もさほど話題にならなかった印象がある。
それでも非情さと憐憫性が入り混じる人間の本性に、嫌でも命が関わってくる『非人間性』を際立たせる展開は見応えがある。それはジョンヒューストン監督によるタフな調整力の賜物と言えるであろう。
少し説明的過ぎる部分もあるし複雑な展開と相関図で混乱する観客もいるだろう。それでも、この手の作品としては上手くまとまっていると感じる。


