定番についてだが。
変わらぬことが好きがベースではある。とはいえ、食べ物に関しては些か話が違う。
例えばチェーン店などは、いつ行っても同じものしか頼まない、ところが個人経営で飲酒も嫌がられない好きな店は定番を頼まず、限定そうなメニューを頼む。一期一会だと思うからだ。
そんな店が何度かメディアに紹介され、名物はコレです、どの取材でも同じ料理が選出されると一見客は完全にそれを注文。そ奴には一期一会だろうし。
確かに自分もチヤホヤされる前から好きな一品だとしても絶対に注文しなくなる性分だ。何度か通う客にも、それがお目当てで毎回頼む人もいる。しかも止せば良いのに「やっぱりここはこれが一番」とか同行者なりに訳知り顔で発言する。
絶対に話したくないタイプだ。定番は安心だから定番ではある。でも、同じ注文ばかりでは店の店主にとって遣り甲斐はあるのかとも疑念すら湧く。まあ、余計なお世話だろうが。
苦手な人間は更にいる。地元の立ち飲み屋で話し掛けられ、うっかり生まれも育ちもここで、などと言ってしまうと「どこが美味しいですか」と自然に尋く輩だ。
誰彼構わず興味があることを尋くのは良いが、せめて天麩羅とか洋食とでもなく「どこが」と発言。
恐らくボキャブラリーもコミュニケーション力にも疎いというか、そんなことを気にもせず生きてこられた知的レベルの方と即断。
そういう時は嫌な性格の自分が発動する。「さあ、どこでしょうかね。味覚は人それぞれだし」と答える。ただし、更に何かしらタダで情報が欲しそうなタイプはこちらの意思など汲まず引き下がらない。
となれば、こちらも嫌な奴に拍車をかける。「残念ですが、この地域でイメージする安くて旨い義理と人情の店は完全に絶滅しました、僕が学生時代にすでに店主さんは老齢だったし」と言ってみる。
まァ、若い頃にそんな人情溢れる小さな店で安く美味しく食べられたのは、幸か不幸か悩みますが、と肩をすくめる。
「だって無くなった店と現在を比較しても行けないから 逆に失礼ですものね」とヤラしく続けたり。
それでも現況で何とか情報をと再度尋かれると、何も深く考えず取り敢えず旅の途上に良い思い出だけ欲しがり、損だけはしたくないが基本なのかと邪推までしてしまい、流石にハッキリと答える。
「申し訳ありませんが、今日初めてお会いした方で、あなたのアレルギーや味の嗜好性も知らないし。それにあなた自身は大人でしょうが黙って写真を撮り名店発見などとSNSに上げたりしないとも限らない」と。
「別にあなたを非難してるわけではなく、貴方がアップしたSNSを見て行った人間がどんな輩か分らぬということです。会ったこともない人のフォロワー数に一喜一憂してると全員が善人かどうか、少なくとも僕は判断しかねるし」。
実に嫌な奴だと思う。ヘタしたら喧嘩にもなりかねないが。まあ、そこは自分がリノ・ヴァンチュラとは言わないがアルド・レイ的風貌であることは幸いしているかも。
そもそも一期一会で、別に良い印象を持たれたいとも思わないタイプ。かといってネットでの評価は高いが、地元民は絶対に行かぬ店でも言えば喜ぶところを紹介するほど野暮でもない。
ということは逆にTVや雑誌で名店と紹介されて心が動いても行っちゃいけないと思い込んでしまう。それこそ人生の筋道の関係だろって。
これじゃ了見が狭くなるだけなのに。変な頑固さが自分の定番か。まあ、これで嫌われて身を滅ぼすとなっても自業自得ですな。


