居酒屋 -GERVAISE (1956年)

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スタッフ
監督:ルネ・クレマン
製作:アニー・ドルフマン
脚本:ジャン・オーランシュ、ピエール・ポスト
撮影:ロベール・ジュイヤール
音楽:ジョルジュ・オーリック

キャスト
ジェルヴェーズ / マリア・シェル
クーポ / フランソワ・ペリエ
ランティエ / アルマン・メストラル
ヴィルジニー / シュジ・ドレール
ポシュ夫人 / マティルド・カサドシェ
ロリユー夫人 / ジャニー・オルト
クレメンス / ミシュリーヌ・リュシオニ
ポワゾン / リュシアン・ユベール
ボシュ / ジャック・イリング

日本公開: 1956年
製作国: フランス コロナ・フィルム作品
配給: 東和


あらすじとコメント

パリの下町での人間ドラマ。原作は自然主義文学の先導者エミール・ゾラで、冷徹な視点で敗者を冷たく描くような作家である。ゆえに何とも嫌なティストの人間ドラマ。

フランス、パリ

19世紀末、洗濯女のジェルヴェーズ(マリア・シェル)は内縁の夫ランティエ(アルマン・メストラル)との間に二児を儲けるが、目の前のアパルトマンに住む尻軽姉妹の妹と駆け落ちされてしまう。

途方に暮れる彼女だが駆け落ちした姉の方が、わざわざ笑い者にするために仕事場まで来たので、つかみ合いの大喧嘩となってしまう。

それでも健気に生きようとする彼女の前に屋根職人クーポ(フランソワ・ペリエ)が現れ、子連れでも気にせず結婚を申し込んできた。彼は貧しいながら真面目な職人で、やっと運が向いてきたと喜ぶジェルヴェーズ。

やがて子供もでき、コツコツと貯めた金で自分で洗濯屋を始めようとする。ところが、その矢先クーポが仕事中に屋根から滑落し重傷を負ってしまう・・・

運に見放された女性の人生を描く重いドラマ。

手クセの悪いヒモ男に逃げられ、次の亭主は事故以降、酒浸りで仕事もしない始末。そんなヒロインに恋情を抱き、何とか力になろうとする鍛冶職人。

三人目の鍛冶職人以外の男は最低のタイプばかりである。

主人公のヒロインはそんな相手を選んでしまうので不幸を背負い込んでいき、同性からも蔑まされるタイプでもある。

直情型でもあり男性依存症。そんなヒロインの性格を知った上で、しゃぶり尽くそうとする怪我をした亭主。しかも大酒飲みで店の金にまで手をだす彼は、何と昔のヒモ男を家に同居させる始末。

それでも、文句を言えないヒロイン。当然、どのような先行きが待っているかは簡単に想像が付く。

残るは親切な鍛冶職人だが、彼だってストを扇動し、妨害活動の首謀者と誤認定され挙句に刑務所送り。

どこまでも運から見放されていくのだ。重厚なるドラマと呼ぶには重苦し過ぎる内容。「自然文学主義」と呼ばれるエミール・ゾラの小説が原作だが、何とも自ら不幸へと舵を切っていくヒロインに肩入れしようにも、どこか自分が成長しないからだろと突き放したくもなる。

それでもヒロインを演じるマリア・シェルの変幻自在の演技には見入ってしまった。

息苦しく、むさ苦しい場末でしか生きられぬ人間たちの人生賛歌と呼ぶには切な過ぎるドラマ。ラストに、ほんの少しだけ明かりが灯るが、焼け石に水的な印象でもある。

どこか自分の方が「マシ」と妙な優越感も喚起され、結果、どうにも複雑な印象が勝る佳作。

余談雑談 2025年2月15日
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