船を降りたら彼女の島   平成14年(2002年)

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スタッフ
監督:磯村一路
製作:加戸守行
脚本:磯村一路
撮影:柴主高秀
音楽:押尾コータロー

キャスト
河野久里子 / 木村佳乃
河野周三 / 大杉漣
河野泰子 / 大谷直子
広瀬健太 / 照英
高原先生 / 村上淳
河野美津子 / 烏丸せつこ
河野創平 / 佐々木蔵之介
河野和男 / 桑原和男
山下先生 / ベンガル
宮司 / 六平直政

製作国: 日本 えひめ映画製作委員会
配給: アルタミラピクチャース


あらすじとコメント

日本の原風景を背景に、帰郷した女性の心の機微をメインに家族愛を描いた作品。

愛媛、瀬の島東京から二年振りに帰島した久里子(木村佳乃)。港からすぐのところで、小学校の同級生健太(照英)に声を掛けられた。すぐには思い出せない久里子。それでも、何十年振りだっけと答えると、数年前に同窓会で会っただろと笑われた。何かあったら連絡くれと笑う健太。どうやら思慕の情があるようだ。

彼女は廃校した小学校を買取り、民宿に変えて営む元教師の父周三(大杉漣)と母泰子(大谷直子)の元へ行った。校庭にいた周三は、どちらさんですか、と真面目な顔で言ってきた。どうやら妙な『わだかまり』があるようだ。突然の帰郷だったらしく、母は何も用意してないわと笑って出迎えた。

そして、初めて新しい実家に足を踏みれて・・・

一時帰郷した女性の静かな心情の流れをノスタルジックに描く作品。

誰にも言わず、突然、帰島してくるヒロイン。何か訳がありそうな風情。

廃校の木造校舎を買取り民宿を開いたが全く客が来ない両親。何日滞在するとも告げないし、聞かれない。

数年、音信不通だった娘に気まずさと怒りもありそうな父親。娘は娘で何やら親に話がありそうだが、何となく言いだせない。

そんな淡々とした、ゆったりとした島時間が流れていく。

ある時、松山市内に住む友人と会い、小学校時代のことを思い出す。記憶に蘇るのは、港で再会した漁師の同級生と、卒業後、一回も会っていない、転勤族の親を持つ少年。

実は、少年はヒロインの淡い初恋相手。しかも、彼女は当時背が大きく「男子」と呼ばれていた。それもあり、少年とも「わだかまり」を残したままの苦い思い出が残っている。

そして、妙に後ろ髪を引かれ、彼を探そうとし始める展開。

主人公と父親は、ワザとか本当なのか「痴呆症」気味な受け答えをする。ただ、ヒロインの場合、忙しい東京から戻り、いきなりの田舎時間への戸惑いもありそうだ。

そこで交錯する現在の自分と淡い初恋の頃の自分。

監督は奇才若松孝二に見出され、ピンク映画を経た磯村一路。

全編、瀬戸内海の島々でロケを敢行し、昭和の残り香をこれでもかと画面に写り込ませる。

場所柄もあり、小津安二郎の「東京物語」(1953)的な印象を受けた。

ストーリィ自体も小津作品のように、淡々と進む家族の話。ただし、舞台となる木造校舎に代表される美しい場所と自然が描かれても、妙な違和感が勝る。

監督の力量とも感じるし、父親役の大杉漣の「普通を普通」に演じようとする違和感が気になった。

要は、出演陣の誰もが妙な演技臭が漂う。その点ではある意味、統一感があるのだが。

ノスタルジーを醸そうとし過ぎて、全体的なバランスが悪いし、この内容で2時間の上映時間も長過ぎる。

静かなメリハリで、各々の心情を描くにしても、やり方があったような気もする。

地方活性化の流れを汲む作品なのかもしれぬが、妙で微妙な雰囲気が流れ続けるのが残念。

風景を楽しむヒーリング映画として楽しむのが良いかもしれない。

余談雑談 2020年11月1日
今回の都々逸。 「惚れた数からふられた数を 引けば女房が残るだけ」 ある意味、「のろけ」か。でもな、熟年離婚と騒がれて久しいし、事実退職金目当てで、妻側から訴訟なんてこともあるとか。 いやなご時世だね、なんて嘯く人もいるかもしれぬが、そうい