天国への階段 – A MATTER OF LIFE AND DEATH(1946年)

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スタッフ

監督:マイケル・パウエル、E・プレスバーガー
製作:M・パウエル、エメリック・プレスバーガー
脚本:M・パウエル、E・プレスバーガー
撮影:ジャック・カーディフ
音楽:アラン・グレイ

キャスト

カーター少佐 / デヴィッド・ニーヴン
リーヴス医師 / ロジャー・リヴシー
ファーラン / レイモンド・マッセイ
ジェニー / キム・ハンター
バローズ / マリウス・ゴーリング
裁判長 / エイブラハム・ソフィアー
天使 / キャサリン・バイロン
ボブ / ロバート・クート
英軍パイロット / リチャード・アッテンボロー

日本公開: 1950年
製作国: イギリス アーチャーズ作品
配給: BCFC、NCC


あらすじとコメント

前回、絶妙なプレイボーイを演じたデヴィッド・ニーヴン。しかも、同一映画の中で白黒とカラーが混在する作劇が同じ。違うのは内容。まったくもって奇妙な作品。

1945年5月。第二次大戦下のイギリス近くの洋上。英空軍のカーター少佐(デヴィッド・ニーヴン)の乗った爆撃機が被弾し、墜落の危機に瀕していた。同乗しているのは既に息絶えたボブ(ロバート・クート)のみで、他の乗組員はパラシュートで脱出していた。しかし、カーターにはパラシュートはなく、無線機で偶然交信できたアメリカ軍から派遣された女性通信士ジェーン(キム・ハンター)と最後の会話をしていた。そんな二人は、声のみでお互いに好意を持つ。カーターはこのまま飛び降りて、もし会えたらデートしようと力なく笑い、身を投じた。しかし、何の偶然か洋上に落ち、助かってしまう。その上、たどり着いた海岸でジェーンと会ってしまい、たちまち恋に落ちる。

一方、天国では大騒ぎになっていた。天国に来るはずの一人が行方不明になっていたからだ。担当は管理人第71号のバローズ(マリウス・ゴーリング)。彼はフランス革命で斬首された貴族だった。ことの次第を尋かれると、カーターを迎えに行く途中、霧で見失ったと答えるバローズ。既に天国召喚時刻を20時間も過ぎていた。しょうがなくバローズはカーター探して会いに行くと、空白の20時間でジェーンと恋に落ちたから天国へは行きたくないと言いだした。確かに一理あるが、自分の裁量では決定できないと告げると、そっちの責任だから訴訟を起こすと言いだす。仕方なくバローズは、前代未聞なことなので検討すると去っていった。

このことをジェーンに話すと、彼女は村の医師リーヴス(ロジャー・リヴシー)に相談した。リーヴスは診療してみると協力を申しでた。彼のあまりにも現実的な妄想に興味を持ったのだ。

そんなカーターの元へ、天国での裁判が決まったとバローズがやって来て・・・

斬新でモダンなファンタジー映画の秀作。

何が面白いかといって、その卓越した着眼点と作劇法にある。天国が白黒で地上がカラーなのだ。クロード・ルルーシェや前回の「悲しみよこんにちは」のように過去と現在を描き分けるために用いられる技法でなく、天国と地上である。

しかも、白黒とカラーを混在させた作品の第一作と言える。白黒からカラーへオーヴァー・ラップするという手法は、現在では何てことないが、当時の撮影技術では不可能と言われていた手法だ。その上、同一画面上に白黒とカラーを混在させるのも不可能と信じられていた。それをいとも簡単に見せてくれる。

演出は以前ここで扱った「黒水仙」(1946)の名コンビ、マイケル・パウエルとエメリック・プレスバーカー。「赤い靴」(1948)でも、当時イギリスで使用し始まったばかりのフル・カラーを用いたコンビだ。「黒水仙」のときにも書いたが、彼らの色彩センスは見事という他ない。本作も然りである。

それに天国の設定にも興味をひかれた。空軍の軍人専門の部署があり、一足先に着いた主人公の仲間が、もう来るはずなのに、と来天者の列を眺めていると、アメリカ、インドといった連合軍パイロットたちが続々来天する。しかし、ドイツやイタリアといった敵兵はやってこない。彼らは地獄へ行ったのだろうと想起させるのだ。

その天国と地上を結ぶのが長い長い階段である。しかもエスカレーターになっているのだ。

映画は後半で天国での裁判劇へと相成るが、その設定も実に興味深い。主人公には弁護人をつける義務があると言われ、誰を指名するかは自由であると。フランス貴族はリンカーンやプラトン、ソロモンなどを挙げる。ただし死んだ人間でなくてはいけない。一体誰を指名するのか。このあたりの展開は絶妙に面白い。

更に法廷ではブール戦争やクリミア戦争などで死んだ各世紀、現大戦での連合国側の軍人ばかりが参加し、一般人は登場しない。まさに歴史的軍事法廷である。その上、何と検事は独立戦争でイギリス軍によって殺害された第一号のアメリカ人が務める。つまり、イギリス人に対して心底憎悪を持つ男なのだ。

演じるのは悪役専門のレイモンド・マッセイ。本人にそっくりな大統領を演じた「エイブ・リンカーン」(1940)印象深い悪役の「毒薬と老嬢」(1944)などが記憶に残る。

裁判シーンでは、あからさまにイギリスの対米観を見せつける。かといってフランス貴族もどこかお調子者という設定。

その貴族役はマリウス・ゴーリング。以前扱った「将軍月光に消ゆ」(1956)、「渚のたたかい」(1965)でドイツ軍高官を演じた名優だ。本作ではいかにもノリの軽いフランス訛りの英語で、皆を煙に巻く。

ヒロインは後に「猿の惑星」(1968)でサルの科学者ジーラを演じるキム・ハンター。もっとも、あちらでは特殊メークで顔を判別できないが。

上手い役者陣と見事なカメラ・ワーク。そして秀逸なる演出と三拍子揃って、ファンタジーとしてのエポック・メイキング的作品。

余談雑談 2007年5月5日
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