新・黄金の七人 7×7 – SEVEVN TIMES SEVEN(1968年)

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スタッフ

監督:マルコ・ヴィカリオ
脚本:セルジオ・ルッフィーニ
撮影:フランコ・ヴィッラ
音楽:アルマンド・トロヴァヨーリ


キャスト

ブレイン / ガストーネ・モスキン
ボドーニ / ライモンド・ヴィアネッロ
ビッグ・ベン / ゴードン・ミッチェル
ビンゴ / ポール・スティーヴンス
サム / ライオネル・スタンダー
バナナス / ナザレノ・ザンペーラ
謎の美女 / エリカ・ブラン
刑務所長 / アドルフォ・チェッリ
警官 / テリー・トーマス

日本公開: 1969年
製作国: イタリア エウロアトランチカ・プロ作品
配給: 東和


あらすじとコメント

現金強盗系の作品で考えた。この手の映画は数多く、あれにしようかこれにするかと、色々考えて、結局、ひねっていきなりシリーズものの第三作。

イギリス、ロンドン。昔の頑強な城塞をそのまま使いながらも、監視カメラで集中管理する最先端警備システムを誇るハードフォード刑務所で、囚人たちのハンストが行われていた。今度の土曜日に行われるサッカー中継をTVで観戦させろというのだ。

しかし、囚人以上に偏屈な所長は、頑として首を振らない。結局、囚人たちは根負けするが、詐欺師のブレイン(ガストーネ・モスキン)、偽造印刷のプロ、ボドーニ(ライモンド・ピアネッロ)ら六人だけは最後まで頑張って観戦許可を勝ち取った。ところが、彼らは餓死寸前で、病室に入院と相成る。実はこれこそが、ブレインらが三年前から考えていた周到な計画だったのだ。サッカー中継中はロンドン中がテレビに釘付けになることを予想して、あらかじめ病室の普通の状況を録画しておき、監視カメラに接続して看守たちの目をごまかしている間に脱獄するという計画だった。

しかも、ただの脱獄ではなかった。何と彼らは一度脱獄して、王立造幣局に侵入し7000億円分の本物の紙幣を印刷して隠し、サッカー中継が終わる前に刑務所に戻るというものだ。そのために六人はわざと小さな犯罪で投獄されていたのだ。

ところが、病室に彼らの計画を知らないコソ泥のサム(ライオネル・スタンダー)が入院していて・・・

そうくるかと思わず唸った犯罪コメディの佳作。

カジノや銀行強盗、偽札を作るという犯罪映画はこれまでも数多く作られてきた。しかし、造幣局に侵入してホンモノの紙幣を刷るという発想には驚いた。しかもそのためにわざと投獄され、刑務所に戻って何喰わぬ顔で釈放を待つ。それをコメディとして描く。いやはや、この手があったかと驚いた。

日本でも公開当時よりはサッカー人気も定着したので、ロンドン中がサッカー・スタジアムとテレビの前に集中して、刑務所も造幣局も誰も他人の行動など気にしないという状況は現在の方が解りやすいだろう。

そんな状況でおかしな事態が立て続けに起きる。しかも、映画ファンの心をくすぐるシーンもでてくる。

例えば、刑務所長が部屋に鳥かごをいっぱい吊るしているのは「終身犯」(1963)のパロディだし、市内ででてくる口うるさい老婆は「マダムと泥棒」(1955)が元ネタと思われる。更に前の二作では色っぽい女性が絡むが、本作では仲間に女性を入れられなかったからか、突拍子もなくヌード姿の女性がでてくるという荒業サービス・ショットが用意されている。当然、配給会社はそれを前面にだして売り物にした。ストーリィ進行に大して影響しない登場なので苦笑したが。

でもって、この映画で一番のキーマンは誰かというとコソ泥役のライオネル・スタンダーだ。1930年代から活躍する脇役専門のコメディアン。

その彼だけが計画を知らない。しかも、彼は心臓マヒという持病を持ち、いつどこで発作が来るかわからないという設定。いかにも小悪党の癖に、腹に一物持っていそうで、天然なのかわざとなのか、常にプロ集団の足を引っ張る。当然、それがサスペンスを生むし、コメディをも強調させる。

監督はマルコ・ヴィカリオ。「黄金の七人」(1965)「続・黄金の七人レインボー作戦」(1966)から本作と立て続けに三本作っている。一作目も面白いが、個人的には本作が一番好きだ。

一応、一、二作目は大体同じ登場人物で金塊を盗むというストーリィは同じだが、本作だけは紙幣印刷という観点からも完全に独立した作りと感じた。ただ、シリーズ全作に通していえるのは、血なまぐさいアクションや殺人が当り前に起き、その後に仲間割れとか警察との追いつ追われつがクライマックスとして登場する作品群と違う点。どれもが頭脳プレイのコメディとして描いた作劇に好感が持てた。

この後、「黄金の七人・1+6/エロチカ大作戦」(1971)という四作目も公開されたが、これは監督と一、二作目に主演した女優ロッサナ・ボデスタが同じだけで、内容はまったくのベツモノ。

ベタで脂っこい喜劇が多いイタリア映画の中で、ある意味、スマートさを感じさせる珍品。

余談雑談 2007年12月29日
今年最後の発行です。お付き合い有難うございました。 今年も殺伐とした事件や驕りの心が起こした事件など、嫌なニュースが目立った一年だった気がする。誰かに先導され、次々と流行や価値観が激変する中で、やっと新しいことに慣れた頃には次の事象が先行し