スタッフ
監督:萩生田宏治
製作:磯見俊裕、定井勇二、利重剛
脚本:萩生田宏治、利重剛
撮影:伊藤寛
音楽:今野登茂子
キャスト
大江晴男 / 西島秀俊
小山深雪 / 片岡礼子
小山チハル / 森山玲愛
大江とみ / 吉行和子
福原政義 / 高橋長英
山岡 / 光石研
福原ナオミ / 相築あきこ
医者 / 諏訪敦彦
中年男 / ガタルカナル・タカ
カップルの男 / 伊藤淳史
製作国: 日本 ウォーターメロン他 作品
配給: ビターズ・エンド
あらすじとコメント
不器用で頼りない男が二日間で少しだけ成長する姿を描く小品にして、かつ大好きな作品。
千葉県富浦町。二月にしては暖かな日。
東京で衛生管理士をしている晴男(西島秀俊)は、突然母親(吉行和子)が再婚するという連絡を受け、久方ぶりに故郷へ帰ってきた。再婚相手が同級生ナオミの父親だったこともあり、共通の先輩がやっている居酒屋へ行く。そこで晴男は、かつて一度だけ関係を持った年上の深雪(片岡礼子)と再会する。深雪は離婚して七歳になる娘を連れ、帰ってきていたのだ。しかし、母子の生活は厳しく、居酒屋で洗い物のパートをしていたのだった。
先輩とナオミと一緒に飲みなおそうと店を辞したが、彼女のことが気になり店へ引き返す晴男。瞬時にしてお互いの寂しさを感じ取ったふたりは、その場で再び関係を持ってしまう。
その帰り道、8年前に一度だけ関係して姿を消した彼女に晴男は随分と探したと語る。そんな彼を見て、ふと、つぶやく深雪。「目元なんか、あんたにそっくり」確かに計算は合う、でも、まさかと驚く晴男。「明日、遊びにいらっしゃいよ。娘も会いたがってるわ」
翌日、彼女の家を訪ねるとチハル(森山玲愛)が、ポツンとひとりでいた。声をかける晴男。
しかし、どうも様子がおかしい・・・
精神的に脆弱な青年が子供に振り回されることで自分を見出す佳作。
愚直といえば聞こえは良いが、単純でありながら、決断力がなく不甲斐ない青年。たった一回の、しかも初体験だった相手との再会に動揺し、混乱する。その上、相手の子供が自分の娘だと思い込んでしまうほど純粋。もしかしたらと戸惑いながらも、何とか少女に取入ろうとするが、子供にまでその不甲斐なさを見透かされてしまう男だ。
大都会東京と違い、人が少なく静かで、どこか、うらぶれた印象の田舎町という寂れた風景。そんな中に佇む、主人公の心の漂泊感を素直に映しだすザラついてはいるが、透明感溢れる画面。
やがて映画は中盤から、ほとんど主人公と子供だけのロード・ムービー的展開を見せていく。
人の気配のない場所を彷徨うように歩き、春の訪れを感じさせる海沿いで蜃気楼のように存在する二人。そういった場面が連続し、主人公は子供に感化され、少しだけ大人になっていく。
自然体の演技に徹する西島と子役の守山玲愛が素晴しい。また、若い頃、信念だと思っていたことが、実は単なる思い込みだったことにつまずき、人生に疲れ、生活に追われ、さほどの歳でもないのに厭世観を漂わせる片岡礼子の妙な艶っぽさも忘れ難い。
萩生田演出も、妙に肩の力が抜けた感じで、不安定さの中を漂っている人物たちをかげろうのように画面に投影させ、付かず離れず寄り添う絶妙の距離感を維持し続けるカット割りなど、『虚しさと空ろさ』という全体のトーンが統一されていて心地良い。
特段、何てことない二日間の中にちょっとしたサスペンス描写もあるにはあるが、ドラマティックというほどではなく、普通の等身大の人間たちが、ただ、存在するだけ。
しかし、それが何故か、ほのかな暖かさを伴った中で、浮遊しているという印象なのだ。単調気味な展開ながら、ほんの少しだけ変化する人間の心情の機微が微妙に浮かび上がる展開に鳥肌が立った。
劇的に人間は変わらない。だが、小さな出来事の中で確実に成長する。
どこか ポーンと放り投げるようなラストまで、82分という短い上映時間に少しだけ春を感じる佳作。


