チャイナ・シンドローム – THE CHINA SYNDROME(1979年)

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スタッフ
監督:ジェームズ・ブリッジス
製作:マイケル・ダグラス
脚本:マイク・クレイ、T・S・クック、J・ブリッジス
撮影:ジェームス・クレイブ
音楽:スティーヴン・ビショップ

キャスト
キンバリー / ジェーン・フォンダ
ゴデル / ジャック・レモン
アダムス / マイケル・ダグラス
サラス / ダニエル・ヴァルデス
ジャコビッチ / ピーター・ドゥーナット
ギブソン / ジム・ハンプトン
デ・ヤング / スコット・ブラディ
スピンドラー / ウィルフォード・ブリムリー
マコーマック / リチャード・ハード

日本公開: 1979年
製作国: アメリカ IPCフィルム作品
配給: コロンビア


あらすじとコメント

前回の「夕陽よ急げ」(1967)で大地主を演じたアメリカの女優ジェーン・フォンダ。1960年代最後から政治活動に力を注いだのは有名。『戦う活動家』の側面を持った彼女が参加した、当時あまりにもタイムリー過ぎて衝撃が走った社会派ドラマの佳作を紹介する。

アメリカ、カリフォルニア

ヴェンタナ原子力発電所に取材のためTV局から派遣されたレポーターのキンバリー(ジェーン・フォンダ)とカメラクルーのアダムス(マイケル・ダグラス)たち。発電所側としては安全で安価な電力を安定供給できる原発を宣伝してもらおうとしていた。

広報担当から、一応の説明を受けながら制御室を見下ろすスペースに来た時のこと。眼下の室内では制御室長ゴデル(ジャック・レモン)らが突然、慌てた様子を見せ始めた。撮影を止めらていたがアダムスは密かにその様子を盗撮していた。ガラス越しだが、原発関係者一同の尋常ならざる行動に恐怖を覚えるキンバリーら。しかし数分で事態は収まり、ちょっとした誤作動が起きたが、何ら問題はないと説明を受ける。

だが、どうしても腑に落ちない彼女らはフィルムを専門家に見せようとするが・・・

原発の恐怖を描く迫真の問題作。

絶対安全と言われた原発。しかし、現実は歴史が証明してしまった。

本作の全米公開直後にはスリーマイル島原発で、1986年にはウクライナのチェルノブイリ、そして2011年には福島第一原発。

先ず、その先見性に驚かされる。ただし公開初見時は原子力のことなど何も知らなかった自分。宣伝方法も難しい仕組みでの突発事故より、核燃料が漏れると地球の核をも通過し、反対側の「中国」にまで達してしまうことだと言われた。

それでも、まるであり得ないSF映画の態なのかと理解不能だった。そして本作以降、「シンドローム」という言葉が定着したのも事実だろう。ほぼ病状につく印象が強いが。

それはさておき、本作で初めて知った「冷却水消失」や「炉心露出」が何を意味するのかは、当時まったく理解出来なかった。

再見して、その見事なシンクロニシティに驚いてしまった。問題提起の社会派ドラマだが、これほどまでリアルな状況と終息への希望的手法、また利益最優先の上層部側の隠ぺい志向など、分かり切っていることではあるか、背筋が凍った。

女性キャスターの地位向上もまだまだだし、敏腕カメラマンはフリーゆえに契約上の問題から即刻解雇できないとか、一々細かい設定でくすぐって来る。

しかし、それは実に怖い内容が理解しづらいと考えた製作側の意図であろう。解りやすく体制側の悪性と正義を貫こうとするのは中間管理職から下っ端の人間ばかりであると対比させる。

冒頭で原発の仕組みを図面を使って開示するのも導入としては説明的過ぎるとも思ったが、別な意味で疑問符が幾つも灯ったのも事実。つまり、当時の自分には「原発の仕組み」そのものが理解できなかったのだ。

しかし、福島の時にTVで嫌というほど見せられた「炉心」構造図とまったく同じで、いかに自分らが幸運であったのかと理解もした。「ただちに人体への影響はない」と何度も刷り込まれた3・11。

しかし、世界各国はどう行動したか。臨時航空便、海上輸送の大型船舶が派遣され、自国民は直ちに東京を含む関東圏、しいては日本から脱出せよとの行動が何故取られたのか。行き先のない日本人は留まらざるを得ず、せめてとミネラル・ウオーター、紙製品、備蓄食料品の買い占めで難を乗り切ろうとした。

しかも日本では長きにわたる政党からの政権交代が起きていたタイミング。それでも「大本営発表」を繰り返した。本作に登場する上層部や建設会社は、それすらアナウンスせず、いきなり人間の命を奪おうとする。だから娯楽性を加味させた映画なのだ。

主演のジェーン・フォンダとマイケル・ダグラスは有名俳優の二世でもあり、制御室長役のジャック・レモンは単なるコメディ俳優から脱却に成功し、脂が乗っていた時期。

誰もが熱演であるが、やはりジャック・レモンの哀愁漂い絶望感を醸す演技は見事である。

今観ると実に嫌な映画でもあると感じる力作。

余談雑談 2023年5月27日
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