危険な英雄   昭和32年(1957年)

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スタッフ
監督:鈴木英夫
製作:金子正且
脚本:須川栄三
撮影:中井朝一
音楽:芥川也寸志

キャスト
冬木明 / 石原慎太郎
三原葉子 / 司葉子
小野塚捜査主任 / 志村喬
田島社会部長 / 小澤栄太郎
今村 / 仲代達矢
江崎刑事 / 伊藤久哉
友成次長 / 多々良純
笹井 / 宮口精二
三原準之助 / 三津田健
川田 / 三船敏郎

製作国: 日本
配給: 東宝


あらすじとコメント

和製サスペンスで味わい深い作品を何本も輩出した監督鈴木英夫。本作もその一本と呼べるのだが、主役が足を引っ張り過ぎて苦笑を禁じ得ない作品でもある。

東京

実業家三原の息子が誘拐される事件が起きた。脅迫状を受け取った三原は長女の葉子(司葉子)に密かに警察に届けて相談するように命じた。

相談を受けたのは捜査主任の小野塚(志村喬)で、内容から極秘裏に捜査にあたろうとする。ところがその話を立ち聞きした記者今村(仲代達矢)に問い詰められるが、繊細事項のため報道規制に協力してくれと依頼する。

渋々、受け入れる今村だが今度は二流新聞の記者冬木(石原慎太郎)がその話を立ち聞きしていて・・・

功名心に走る記者の暴走の顛末を描くドラマ。

少年誘拐事件が起き、警察は当然報道規制を各方面に要請。

しかし、独りだけ暴走し『特ダネ』最優先と突っ走って新聞報道する記者が主人公。それにより何が起きるのか。

何やかやでご都合主義的にハッピーエンドになる作品も多いが、本作はかなり異色である。

大手新聞と違い、所詮二流紙の記者にしかなれない男。上司も決して上品なタイプではない。

その何ともイヤな主役を演じるのが後に東京都知事になる石原慎太郎である。元々は作家としてデビューし、実弟石原裕次郎は昭和を代表する大スターである。

政治家になり都知事時代の言動でも世間を騒がせたのは事実で、いかにも「目立ちたがり屋」の印象を受ける。つまり、本来はかなりの適役ではある。ところが実弟の裕次郎とは正反対でカリスマ性もなく、それでいて負けず嫌いから、かなり強引な演技で突っ走る。

鈴木監督も閉口しつつ演出に当たったであろうと想像に難くない。最初から最後まで石原の演技の棒読みと木偶の坊的所作の演技には閉口し続けた。ある意味、彼の性格であるかのように徹頭徹尾同じ演技で通し、成長過程が一切見られないというあまりの下手さに、後のアイドル・タレントの稚拙な演技の方がまだ相当マシであるとも痛感させられたほど。

何せアイドルの方が監督の指導に従い努力しようとする姿勢が感じられるから。つまり他者の意見よりも自己の価値観の強制押し付けではないゆえに。

それでいて本作を扱うのは、主役を卑下するためではなく、鈴木監督の主役に頼らない演出に目を見張ったからだ。

エリートを感じさせる記者役の仲代達矢に対し、あくまでも自分のみの正義を振りかざし暴走して誘拐された家族、警察、そして誰かもわからぬ真犯人すべてを追い込んでいく展開の筆致には感銘を受けたから。

特にやっと出来上がった犯人の似顔絵を盗撮する場面で、その絵が画面に出た瞬間、観客に誰が犯人役を演じているかを理解させるショットなど鳥肌が立った。瓜二つ的そっくりさではなく絶妙に違うが、間違いなく誰が演じているかと直感させて、そこに妙なリアルさを際立たせたから。

兎に角、主役には何ら一切期待できないからこその監督や共演陣の燃え方は半端なかったであろうという一体感を感じられる。

怪我の功名ではないが、自分を一歩も譲らず棒読み演技で通した石原も興味深いが、もし、もっとマシな役者に演じさせたら、傑作寄りの作品に仕上がったかもしれない。

確かにブレない自分だけの正義感で押し通す主役は石原慎太郎自身に投影できるので、どこか素人を主役に登用するイタリアのネオ・リアリズモ映画的でもあろうか。

それにしてはドラマティックな内容でもあるのだが。

余談雑談+ 2023年12月12日
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