オーファンズ・ブルース   平成30年(2018年)

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スタッフ
監督:工藤梨穂
製作:池田有宇真、谷澤亮
脚本:工藤梨穂
撮影:谷村咲貴
音楽:村原孝麿

キャスト
エマ / 村上由規乃
バン / 上川拓郎
ユリ / 辻凪子
アキ / 佐々木詩音
ルカ / 窪瀬環
ヤン / 吉井優
/ 村上弘子
/ 曽我三喜男
/ 小森ちひろ
/ 柘植勇人

製作国: 日本
配給: アルミード


あらすじとコメント

PFF(ぴあフィルムフェスティバル)という1977年から続く新人発掘の場がある。毎年開催されグランプリを含む各賞が発表されるエキシビション。自分も学生時代の映画サークルで毎年応募していたので思い入れも強い。当然、粗っぽかったり素人臭満載と雑多。そんな中で印象に残った作品を取り上げてみる。2018年度のグランプリ受賞作品。

某港町

孤児院で育ったエマ(村上由規乃)は若くして記憶が薄れていく症状に苛まれていた。当然、定職には付けずその日暮らしが日常。

ある日、かつての孤児院仲間であったヤンからとある絵が届く。もしかして彼のことも忘れてしまうかもしれない。その前に一度会いたいと消印を頼りに彼を探す旅に出た。

すると道中で幼馴染のバン(上川拓郎)と恋人ユリ(辻凪子)に偶然再会した。彼らは勤務先の金を横領しタヒチまで逃避行をしようとしていたが頓挫し行き詰っていた。結局、あてのなくなった二人はエマに同行することにして・・・

若年性痴呆症が加速する女性を追う心象的ロード・ムーヴィー。

天涯孤独の態のヒロイン。ひとり暮らしでその日暮らし。それでも日々加速する忘却に抗うべく気が付いたことや忘備録として書いたメモを部屋中に張ったり、何冊ものノートに書き込んでいる。

他に大事にしているのは何回も読み直した本。何故なら、毎回が初めての内容だからだ。

そんな彼女が偶然知り合った幼馴染と掴みどころのない恋人と一緒に共通の友人探しの旅に出る。

内容は完全に自分探し的ロード・ムーヴィーの態ではある。

脚本監督を手掛けた当時23歳の工藤梨穂は独特なタッチでいかにも若い新人らしい瑞々しさと個性の際立つ感性で紡いでいく。

ストーリィの統一性なりはない。リズムも一定に貫かれるわけでもなく、ドライなタッチなのに妙なウェット感が常に付き纏う。

監督自身が『終わらない夏』と紹介するように汗や蒸気が印象的に描かれている。しかも特定な場所をイメージさせないために四国や大阪と様々な場所でロケをした効果も上手く無国籍感を誘発するのに成功している。

ただし若さゆえの粗さと繊細さが同居し、常に相反するタッチが漂い、淀む。しかし、それこそが工藤監督のリリシズムであり個性だと感じた。

若い才能が集い具象化していく難しさと愉悦。これは自分が大学時代にサークルで8ミリによる映画を作った経験があるからこその感覚もあろう。

想像と具象の乖離性。ヒロインの忘却性を表すのに敢えて時代を逆行するようなカセット・テープやシングルCDが登場してくる。当然、監督自身も見聞した物品で、実際に楽しんだ経験はないものだろう。だが、そこにこそ調査なりイメージなりで想像が拡がり画面に焼き付ける。

拘ったカメラアングルやショットの心地良いリズム感。役者たちも皆若く人生の経験値は低い。その上でだが、アイドルやモデルのような華はなくても絶妙な存在感があるので頼もしい。

この手の自主製作的作品は録音状態が悪かったり、思い込みだけのテクニックが先行したりする作品も多い中、自分的にはリズム感と内容性の合致に心地良さを感じた。理論的にはでなく感性としての愉悦。

ただし、誰もが引き込まれる作品では決してないし、難解ではないが「取っ付きにくい」印象もある。

それでも工藤梨穂監督に将来性を感じた。事実、本作以降も作品を輩出している。今後の継続的な活躍に期待したい。

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