ニノチカ – NINOTCHKA(1939年)

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スタッフ

監督:エルンスト・ルビッチ
脚本:ウォルター・ライシュ、ビリー・ワイルダー
チャールズ・ブラケット
撮影:ウィリアム・ダニエルズ
音楽:ワーナー・R・ヘルマン

キャスト

ニノチカ / グレタ・ガルボ
レオン / メルヴィン・ダグラス
スワナ公爵夫人 / アイナ・クレア
ラジニン / ベラ・ルゴシ
イラノフ / シグ・ルーマン
ブリヤノフ / フェリックス・ブレサート
コパルスキー / アレキサンダー・グラナック
ラコニン / グレゴリー・ゲイ
支配人 / ロルフ・セダン

日本公開: 1949年
製作国: アメリカ MGM作品
配給: MGM


あらすじとコメント

前回の「絹の靴下」のオリジナル。ブロードウェイのミュージカルでなく、本当のオリジナル。昔懐かしい作劇の映画の楽しさを存分に堪能させてくれる逸品。

フランス、パリ。とある超高級ホテルの入口でウロウロする三人組がいた。ブリヤノフ(フェリックス・ブレザート)、 イラノフ(シグ・ルーマン)、コパルスキー(アレキサンダー・グラナック)だ。彼らはロシア貿易局から派遣され、帝政ロシア時代にスワナ公爵夫人(アイナ・クレア)が所有していた宝石を売りさばき、大金を持ち帰る密命を受けていた。しかし、安宿では宝石を預ける金庫もないし、そんなところにいては宝石が偽物と思われるかもしれないと悩んでいたのだ。結局、高級ホテルに投宿を決める三人。

しかし、そのホテルには帝政ロシア時代は伯爵で、今はホテルのボーイをしているラコニンがいた。宝石の話を知った彼は、亡命してパリに住むスワナに連絡を入れる。スワナの愛人で、これまた元伯爵のレオン(メルヴィン・ダグラス)は、彼らに言葉巧みに近付き、宝石の権利の半分はスワナのものだと納得させ、ロシアへ電報を打たせた。するとモスクワから、即時取引停止と全権大使を送るという返電がくる。

計画に失敗したので、帰国すればシベリア送りになるのでないか、と不安を募らす三人。しかも、全権大使を送って寄越すという。いったい、どんな強面が来るだろうと戦々恐々としていたが、現れたのは絶世の美人だったので拍子抜けする。

しかし、このニノチカ(グレタ・ガルボ)という同志は・・・

映画史上の伝説である大スター、グレタ・ガルボが初めて笑った映画。

もしかしたら、昨今の映画ファンは名前すら聞いたことがないかもしれない。しかし、映画史上最大の人気のあった女優のひとりである。その人気は往年のオードリー・ヘップバーンの比ではなかったらしい。

スウェーデン出身でサイレント映画時代から絶大な人気を博し「北欧の神秘の女王」として売りだされた。映画サイレントからトーキーへと変わったときは「ガルボが話す!」と騒がれ、本作では「ガルボが初めて微笑む!」と宣伝された。氷のような冷たい美貌と、一度火がついたら絶対に消えぬ情熱を感じさせる女優。

そんな彼女の後、売りだされたのがイングリット・バーグマンである。バーグマン自身はネオ・リアリズムの巨匠イタリアのロベルト・ロッセリーニ監督と押しかけ不倫の末に結婚したが、ガルボは絶頂期に引退した。その後、一切世間に姿を見せることなく、すべてが伝説となった。

監督はエルンスト・ルビッチ。個人的に大好きな監督のビリー・ワイルダーの師匠である。元々、脚本家だったワイルダーは一連のルビッチ作品で認められた。本作も脚本はワイルダーで、他に以後も彼と共作を続けるチャールズ・ブラケット。更にワイルダーの脚本の師匠でもあるウォルター・ライシュも参加している。当時としては最高の脚本家が揃っているわけである。

本作のファースト・シーンはとある字幕から始まる。『サイレン(セーレーンとも呼ばれる海の女魔神)が、ブルネットの長髪を持った妖女で、空襲警報ではなかった頃の巴里』つまり第二次大戦前のパリである。これだけでも、かなり洒落た脚本であると思った。

監督になってからのワイルダーは部屋の壁に『ルビッチなら、どうする?』という額を飾り、行き詰るとそれを眺めていたらしい。余談だが、ワイルダー・ファンの三谷幸喜は壁に『ワイルダーなら、どうする?』と掲げていると言っていた。また、死ぬ直前のワイルダーに会いに行き、『自分なら、どうする』とか、『こうする』とかのサインをもらって狂喜乱舞していた深夜番組を見たことがある。

このルビッ チという監督はサイレント期に、コメディといえばスラプスティック調の体を張った派手なアクションやギャグが主流の最中に、洗練された洒落た都会派コメディを確立させた人物だ。しかし、どこか、単なるコメディでなく、少しエロティックな場面、皮肉的な展開や描写などを挿入する。まさにワイルダーの作品群を見れば、ほとんど同じであると解るはず。

また、監督はベルリン出身、ワイルダーはウィーン生まれ、そしてガルボがスウェーデン生まれ。皆ヨーロッパ出身で、それぞれのお国柄を映画に反映させている点にも注目すべきだろう。

内容や筋運び、演出方法など、現代とはまったく異なるので、大時代がかった冗長でツマラン映画と感じる御仁も多いだろう。

しかし、映画の歴史的流れに興味があるのなら、避けてはいけない作品である。特にワイルダー・ファンはどれほど影響を受けているかを知る上でも、見逃してはいけないと思っている。

余談雑談 2007年7月7日
試写で「イタリア的、恋愛マニュアル」を見た。不器用な若者から、倦怠期の夫婦など20~50代の男女が織り成す、愛と結婚にまつわる四話のオムニバス劇。恋愛の達人と思われがちなラテンのイタリア人も我々と同じく、くだらない悩みに一喜一憂する様をコメ...