スタッフ
監督: ラルフ・トーマス
製作: ベティ・E・ボックス
脚本: フランク・ルーヴェイ
撮影: アーネスト・スチュワート
音楽: クリフトン・パーカー
キャスト
ハネイ / ケネス・モア
フィッシャー / タイナ・エルグ
ラムズデン / ブレンダ・デ・パンジー
ローガン教授 / バリー・ジョーンズ
ラムズデン / レジナルド・ベックウィズ
ナニー / フェイス・ブルック
ブラウン / マイケル・グッドリフ
ミスター・メモリー / ジェームス・ヘイター
ケネディ / ダンカン・ラーモント
日本公開: 1959年
製作国: イギリス ランク・プロ作品
配給: 日本RKO
あらすじとコメント
今回はヒッチコックではなく、彼の作品のリメイクにしてみた。オリジナルは、イギリス時代にヒッチが残した佳作。それを、どうリメイクしたのか。
イギリス、ロンドン。とある公園。池の対岸から辿り着いたラジコン船を大事そうにすくい上げると歩きだす、船長の格好をした老人。すると、ベビー・カーの子守りをしてた女性が不意にその後を追い始めた。そのとき、赤ん坊の玩具が落ちたので、偶然、通り掛ったハネイ(ケネス・モア)が、女性を呼び止めた。しかし、彼女はそれは自分のものではないと言い張り、老人の後ろ姿を気にするばかり。そしてハネイを振り払うように歩きだした。
そんな女性は公園を出たところで、走ってきた車に、はねられてしまう。慌てて駆け寄るハネイ。すぐに救急車に乗せられ搬送される女性。彼は置き去りにされたベビー・カーを覗いた。しかし、中に赤ん坊はおらず、拳銃が一丁入っているだけだった・・・
面白いオリジナルをリメイクすると、どうなるかという典型的な作品。
原作はジョン・バッカンによるスパイ・スリラー。それをヒッチコックが「三十九夜」(1935)として初映画化した。だが、その作品は戦前に公開されただけ。以後、長らく公開されず、「幻の作品」であった。つまり、当時のヒッチコック映画のファンは、本作を見てヒッチコック作品を想像するしかなかったのだ。かく言う自分もそのひとりである。
で、本作の初見の印象は、まあまあ上手くまとまった作品としての印象がある。
ストーリィは、お節介で、何にでも首を突っ込みたがる主人公が、ベビー・カーの女性が眼前で事故に遭ったことから、彼女に興味を持ち接触し、彼女が英国情報部関係の人間だと知る。で、自室に二人だけでいたときに彼女が殺害され、当然、彼が殺人容疑者として指名手配され、彼女が言い残した『39階段』『ブーメラン』、そして「スコットランド」というキーワードから、秘密を暴こうと逃亡しつつ、究明に当るという内容である。
確かにヒッチコック好みの設定ではある。で、本作はそのリメイクであり、イギリスでは、当然、オリジナルを知っている人間も多い中で製作された。
こういうときに監督が考えるのは、前作と比較されるので、そのスタイルを踏襲するか、まったく違う演出を試みるかに分かれることが多い。
本作は、どちらかというと後者である。DVDで再見したが、ストーリィ自体は同じだが、映像化するポイントを微妙に変えていると感じた。しかも、スリルを盛上げる手法も、敢えてヒッチコック的なものを意識的に外す。その点では、ラルフ・トーマス監督はヒッチコックより、やはりイギリス映画の巨匠キャロル・リードを意識したと感じた。しかも、あくまでもイギリス・スリラー映画のスタイルを踏襲している。
なので、そこそこツボを押さえた作劇で進行する。しかし、主人公が「世界中を旅する政府関係の仕事」にして、「帰国したばかり」など、まるで、殺される女性がではなく、彼そのものがジェームス・ボンドのようなスパイかと思わせる。しかも、女性に対しては積極的である。ただし、強くてスマートではない。
そして、何よりも鼻に付くのが、あま りにもタイミング良くアクシデントを回避するご都合主義の数々。この当時は、これで、よく受け入れられたなと思うが、反面、自分自身にも、それを素直に楽しめる感性があったのかと、懐かしさをも感じた。
残念ながら、あくまで凡庸な作品である。


