女相続人 – THE HEIRESS(1949年)

メルマガ会員限定
画像を表示するにはメルマガでお知らせしたパスワードを入力してください。

スタッフ
監督:ウィリアム・ワイラー
製作:ウィリアム・ワイラー
脚本:ルース・ゲッツ、オーガスタ・ゲイル
撮影:レイ・トゥーヴァー
音楽:アーロン・コブランド

キャスト
キャサリン / オリヴィア・デ・ハヴィランド
タウンゼント / モンゴメリー・クリフト
スローパー / ラルフ・リチャードソン
ラヴィニア / ミリアム・ホプキンス
マリアン / モナ・フリーマン
女中マリア / ヴァネッサ・ブラウン
エリザベス / セレナ・ロイル
アルモンド / レイ・コリンズ
モンゴメリー夫人 / ベティ・リンレー

日本公開: 1950年
製作国: アメリカ パラマウント作品
配給: セントラル


あらすじとコメント

前回の「噂の二人」(1961)の監督ウィリアム・ワイラー。ハリウッドを代表する監督の一人であり、今回も女性がメインのドラマを紹介する。

アメリカ、ニュー・ヨーク19世紀半ば、高級住宅が並ぶワシントン広場に診療所と自宅を構える医師のスコーパー(ラルフ・リチャードソン)。彼は溺愛する妻に先立たれ、現在は一人娘キャサリン(オリヴィア・デ・ハヴィランド)との同居である。

しかし、彼は娘の容姿と引っ込み思案の性格を危惧していた。常に亡き妻と比較し、絶対君主の価値観で彼女を育てるというか、理想を押し付けていた。それでも、上流階級の証である舞踏会に娘を連れだした。確かに容姿も劣り、自信のない行動で男性陣からは、中々、相手にされない。

ところが、二枚目で優男のタウンゼント(モンゴメリー・クリフト)が近付いて来て・・・

劣等感に苛まれる金持ち女性の恋と成長を描くドラマ。

金持ち家系ながら容姿が劣り、自分でも自ら前面にでられない若いヒロイン。

絶対君主でもある父親に一切、反抗もできずに成長してきた。しかも父親はことあるごとに若くして亡くなった妻と、主人公の出来の悪い部分だけを比較し、自分の価値観に服従させる。

そんな父娘に深く関わるのは叔母。彼女も亭主を亡くし、その幻影を追って生きている。

そこに、二枚目男性が登場してくる。それなりの金持ちの息子だが、ヨーロッパに遊学し、金を使い果たしての帰国。そんな男がヒロインに近付いてくる。

父親は放蕩ダメ息子で、娘の年間1万ドルの年金狙いだろうと推察する。しかし、未亡人である叔母は、彼こそ王子様だとヒロインをけしかける。

当のヒロインは初めての心優しい男性の登場で舞い上がるのは当然の理。

父親は冷却期間を置けば熱病も冷めるだろうとパリに娘連れで旅立つ。しかし、叔母は家に二枚目を呼び、寂しさを紛らわす始末。

さて、その二枚目の本心は、という筋運び。

単純にそれだけの内容である。しかし、制作された年代にワイラーの手腕がマッチすると、一瞬で鳥肌が立つ進行を見せてくる。

登場人物たちの所作で本心を匂わせたり、逆に混乱させたり。

純真処女の初恋が燃え上がる一方で、大人たちのいびつな価値観と圧力感が異臭を放つ。そして二枚目の本心が「純真」、「打算」のどちらにも取れる演技。

どことなく大人たちの勝手な価値観の押し付けで、息も苦しそうなヒロインが、やがて成長して行くと他の人物の描かれ方は変わらないのに、こちらに訴えかけて来る印象が変わる。

そしてそれを裏付けるヒロインの表情の変化。

別に殺人事件が起きる筋運びではないが、サスペンスが盛り上がっていき、ラストなどヒッチコック張りのスリラー演出。

無垢なヒロインの成長物語というスタンスで、徐々に変化していく心情からの緊迫感に確信感。

そこをワイラーは実に上手く、ヤラシイ作劇で攻めてくる。

時代背景が19世紀半ばという古い時代。なのに、描かれるのは「女性」の変貌。しかも鳥肌が立つほどの。

本作をリアルタイムで見た観客はどう感じたのだろうか。

何てことない内容をこれほど妙味を持って見せるとは、やはりワイラーは大した監督である。

余談雑談 2020年4月4日
先週末、東京は外出自粛令。その上、雪模様だった。自室窓から見る眼下の公園は桜と雪のコントラストが綺麗で妙に印象深かった。日々刻々と扇動報道ばかりになっているが、真面目に自宅待機している人々には、どのTVやネットニュースを見ても暗さ一色で、息...