黒い画集 あるサラリーマンの証言   昭和35年(1960年)

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スタッフ
監督:堀川弘通
製作:三輪礼二
脚本:橋本忍
撮影:中井朝一
音楽:池野成

キャスト
石野貞一郎 / 小林桂樹
〃 邦子 / 中北千枝子
梅屋千恵子 / 原知佐子
杉山孝三 / 織田政雄
〃 ミサエ / 菅井きん
奥平刑事 / 西村晃
大学生松崎 / 江原達怡
竹田部長 / 中村伸郎
田辺 / 小栗一也
早川 / 小池朝雄

製作国: 日本 東宝作品
配給: 東宝

日本ミステリー界の巨匠松本清張。作品の多くが繰り返し映像化された作家で、その中の一本を取り上げてみる。身勝手保身に走る中間管理職の顛末を描くスリラー系ドラマ。

東京、丸の内大手繊維会社の資材課長である石野(小林桂樹)は家族四人で郊外に住む典型的中間管理職。表向きは「石部金吉」の如しだが、裏では同課の梅谷千恵子(原知佐子)と不倫中である。

逢瀬はバレることを恐れ、いつも西大久保の彼女のアパート内のみ。今日も定時に社を出るとパチンコ屋とビヤホールで時間を潰し彼女の部屋に行った。逢瀬を楽しんだ後、駅まで見送るという彼女を制したが、知らぬ顔で後ろを歩くからと悪戯っ子のように甘えた。結局、離れて歩く約束でアパートの角を曲がると、自宅隣家の保険外交員杉山(織田政雄)とすれ違い会釈を交わした。愛人のことはバレてないとホッとして帰宅。

すると数日後、突然刑事の奥平(西村晃)に声を掛けられた。あなた、一昨日大久保の路地で杉山さんと会いましたか・・・

甘い判断で保身に走る中年男の顛末を描くスリラー作。

絵に書いたような中間管理職。時代設定は昭和34年。あからさまに男尊女卑の発想で出世を夢見る男は浮気のひとつもスマートにできて当たり前という性格の主人公。しかも課内というお手軽発想。

挨拶程度のご近所さんとあらぬ場所で、すれ違ったことから、浮気がバレるかもと会ってないと刑事に嘘を付く。

その嘘が相手を殺人容疑者として追い詰めて行くことになる。それでも事の重大さよりも嘘を付き通せば大丈夫と愛人をも巻き込んで嘘の上塗りを重ねていく主人公。

ところが危うくなると愛人を別なアパートに引っ越しさせ、それで一件落着と安堵するレベルの男でもある。

だが引っ越し先には今風な遊び人系大学生がいて色目を使ったりするから、当然次なるサスペンスが生まれ、同年代ゆえに急接近する愛人。しかも大学生はヤクザに負け金取り立てを迫られているというストーリー。

展開としてはとても良く出来ている。ただし、監督である堀川弘通の力量不足が露呈し続けるのが残念。

長く黒澤明の下で助監督を務め、確かに影響を感じさせるカットなども点在はするが、編集などは完全に他人任せで画面の繋がりやリズム感がバラバラでどうにも興味を削がれる。

ある意味、当時の和製スリラーの悪い例が目立つ。緻密さとかカットや編集によるハッとする展開や流れの変化がなく、その上、時折挿入される主人公の独白が説明的過ぎて、何とも観客のレベルを下に見過ぎではないかと感じた。

因果応報というか上っ面だけの『男の甲斐性』で逃げ延びようとする日本人の甘すぎる判断が招く結末は妙味があるのだが、主役の小林桂樹のメイクも含めて大仰な演技もやり過ぎだし、トータル的にバランスが悪くどこか無理矢理に収束させようとする作劇は、ある意味これぞ昭和とも感じる。

救いなのは大の御贔屓脇役である織田政雄が冤罪犯役の保険外交員で出演していること。織田はこの手を役を演じさせると右に出る者がいない名脇役で、織田の妻役の菅井きんの怪演と共に本作の救いとなっている。