悪魔の接吻   昭和34年(1959年)

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スタッフ
監督:丸山誠治
製作:三輪礼二
脚本:高木隆、加藤俊雄
撮影:中井朝一
音楽:池野成

キャスト
相沢恒子 / 草笛光子
内山忠 / 佐原健二
伊藤浩三 / 河津清三郎
伊藤友子 / 笹るみ子
伊藤幸江 / 坪内美詠子
桑島和子 / 樋口年子
則夫 / 西条康彦
梶原 / 村上冬樹
杉本 / 中丸忠雄
藤村 / 清水元


製作国: 日本 東宝
配給: 東宝


あらすじとコメント

和製サスペンス・スリラー。当時は二本立興行の定番であり、数多く制作されてきた。本作は欧米の犯罪系佳作群をかなり意識した凝った意匠の作品。

東京

ローン販売で売り上げを伸ばす女性用高級洋服店があった。社長は伊藤(河津清三郎)だが、彼は婿で実質は妻が握っていた。

そんな伊藤はストレスからギャンブルに走り、闇金から借金をしており、現在は取り立てに焦っていた。しかも彼には妻の異母姉妹で妻を憎悪するホステス恒子(草笛光子)という浮気相手がいて、彼女と過ごすときのみが安寧のときでもあった。

そんな二人は社員内山(佐原健二)を上手く利用して、とある計画を実行に移そうと・・・

男たちを巻き込んで欲望を満たそうとする悪女を描くスリラー。

元役所職員の婿入り社長。当然、置物の立場で妻はやり手で完全に亭主を掌中に収めている。

となれば男は浮気に走ったりギャンブルに染まったりする。しかもその婿を篭絡して、自分を女中である妾腹の非嫡出子と蔑む実権を握る正妻を憎んでいるバーの女が色々と画策していく内容。

一体どんな計画なのかは始めは明かされず、社員で配達員を兼ねる青年と社長夫人が訳アリ関係だと噂好きの女店員に吹き込む社長。外堀から埋めようとする作戦なのか。

だが、その程度では面白い展開など期待できない。

徐々にダイナマイトやタイマー時計まで登場してくる大胆な犯行が明らかになっていく。日本映画としては荒唐無稽な設定だが、当時はかなり多く用いられたスケール感を煽る設定。

そこに今度はイケイケでいかにも現代風で遊び人の社長夫人の姪っ子と仲間たちが絡んで来て話を撹拌していく。「太陽族」系の無節操ヤングたちだし、逆に火に油を注ぐ存在で社長たちを困惑させていく。

音楽も当時流行りのモダン・ジャズを使用したり、白黒画面の照明でのサスペンスを盛り上げたりとセオリー通りの展開を見せて行く。

ただし、日本映画の弱点である端折り的進行と撮りたい場面だけを強調する強引なショットなどでバランスが妙に悪くなるのが難点。

冒頭から、『この結末は未見の人に教えないで下さい』と但し書きがでるのも、どんでん返しがありますよ教えてしまうし、鑑賞後にそれほど面白くなかったと落胆度を加速させる結果に。なので製作側の意図を汲んで好意的に観て、ちゃんと騙されてくれよという上から目線のシグナルなのだろうと興を削がれた。

何よりもキャスト陣が弱いのが難点。主役の巻き込まれ型的青年、婿養子の小心者社長が精神的に追い詰められていくときのやり過ぎ感のある演技なども、どうにかならなかったのかとも感じた。

特に婿社長を演じた河津清三郎は大好きな役者で貫禄ある悪役親分や、遊び人の色気が滲むスケベ爺など、いつ観ても惚れ惚れするのだが、本作ではその『妙な上手さ』が仇となり大袈裟すぎる演技で悲しくなった。

ストーリィの整合性も大雑把だし、サスペンスの盛り上げ方や緊張感の持続性なども弱いのは監督の力量でもあろうし、終盤での警察の絡み方も不自然極まりない。

つまらなくはない設定と筋運びなのに残念さが勝ってしまう、いかにも乱造期のスリラー。

もったいない。

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