スタッフ
監督:倉持健一
製作:馬上伸一
脚本:倉持健一
撮影:安田圭
美術:仲前智治
キャスト
女 / 椎名へきる
男 / 笠原紳司
おっさん / 本郷功次郎
月子 / 加藤登紀子
バカ / 葛山信吾
ガキ / 黒田倫弘
製作国: 日本 オフィス・シー・エー・プランニング
配給: ギャガ
あらすじとコメント
沖縄、恩納村海辺にポツンと一軒だけ佇む、柱に屋根を乗せただけの掘っ立て小屋の飲み屋『月子』。メニューは「山羊汁」と「山羊の刺身」のみ。主人のおっさん(本郷功次郎)と、計算が全く出来ないバカ(葛山信吾)がやっている。
そこへ、しつこい恋人が嫌で東京から逃げて来たという男(笠原紳司)が突然やって来て居候を決め込んでしまう。店主である無口なおっさんは5年前に死んだ月子(加藤登紀子)という妻を忘れられないでいるようで、他人には無関心。
ある日、男の恋人の女(椎名へきる)もやって来て、彼女も居ついてしまい・・・
人生なり都会に負けた人間たちが織り成す何とも不思議な味わいの映画。
亡き妻を忘れられず未練たらたらの態の男。バイクで自分探しならぬ負け犬として来島してきた若者や、彼を追いかけてくる恋人。
その他に拳銃を所持した謎のスーツ姿の男、女性を強姦しては殺害する連続殺人鬼など、妙なサブキャラも登場してくる。
監督は脚本も手掛けた倉持健一で、彼のデビュー作である。
かなり沖縄が好きと感じさせては来る。ただ演劇出身らしく、映画としての帰結性なり集約性には疎いと感じた。
それでも冒頭、薄暗い店の備品をゆっくりと上下するフェード・インとアウトで丹念に追って行くカメラ・ワークから新鮮さと落ち着きを漂わせて興味を惹かれた。
だが、それ以降は様々な凝ったティストで進行させてはくるのだが、逆に混乱も見られるのが新人にありがちなイメージ。
そんな中では、何よりもグツグツと煮える「山羊汁」が食べたくなるのは興味深かった。沖縄人でも半分以上は味と臭いが嫌いという料理で、肉でいえば豚は御馳走でありヤギは貧しさの象徴でもあるからという現地人もいる。
メインキャラや謎の人物らの話の展開が思わせ振りなのに、ポーンと観客を突き放すようなシークエンスのオチには疑問符が残り、残念。
最初に出てくる殺し屋や地元の青年が中盤から全く関わって来ないといった尻切れトンボの態をなしているのも、アンサンブルが上手く取れていないと感じた。
つまり普通の整合性を考える劇映画ではなく心象風景的ファンタジーとして捉えれば良いのかもしれない。
ただし、それでは少し責任放棄ではなかろうかとも感じる。そもそも沖縄の海辺に柱と屋根だけの掘っ立て小屋が舞台である。
台風は一切ないという前提なのだろうかと首を傾げたが、そこからしてファンタジーなのかもしれない。
ただ、小屋は安いセットだが、その場に行ってみたいと思わせるし、世捨て人なのか、見捨てられた人間たちなのかわからぬが、人物形成にもあくまでも安い酒的ではあるが、妙な旨味がある。
また、小津安二郎の影響が感じられるカメラ・ワークなども素晴らしく、金をかけなくてもそれなりに良い作品が作れるというお手本でもあろうか。
役者たちも総体的に決して上手いとは言えぬが、キャラクターと顔や雰囲気が全く違うのが幸いし、見ていて混乱しないし、それなりに魅力的な存在感を醸しだしているのも好印象。
沖縄だったら金が無くてもそれなりに生きていけるという願望を感じさせてくれるのだが、対比するために東京のことを悪く言い過ぎるのには苦笑してしまったが。


