スタッフ
監督:山田洋次
製作:島津清
脚本:山田洋次、浅間義隆
撮影:高羽哲夫
音楽:山本直純
キャスト
車寅次郎 / 渥美清
諏訪櫻 / 倍賞千恵子
松岡リリー / 浅丘ルリ子
車竜造 / 下条正巳
車つね / 三崎千恵子
諏訪博 / 前田吟
国頭高志 / 江藤潤
山里かおり / 新垣すずこ
国頭富子 / 金城冨美江
御前様 / 笠智衆
製作国: 日本 松竹
配給: 松竹
あらすじとコメント
長寿シリーズ「男はつらいよ」。主人公の寅さんが初めて飛行機に乗る。その行き先が沖縄。どちらかというと極北感が強いシリーズだが、唯一南国が舞台になった作品。
東京、柴又
暫く振りに実家に帰ってきた車寅次郎(渥美清)だったが、丁度妹の櫻(倍賞千恵子)たちがピクニックに出掛けるところだった。そのことを隠そうとしたことから急に不機嫌になり、ひと悶着を起こす。
飛び出そうとしたところで、旧知のクラブ回りの歌手リリー(浅丘ルリ子)から速達が届いた。何と沖縄で吐血し病院に緊急入院したと。
居ても立ってもいられない寅次郎は沖縄に行きたいが、大の飛行機嫌い。それを隠そうとまたひと悶着を起こし・・・
三度目の登場であるヒロインと訳アリ風情になる第25作。
ギネスで認定された同一俳優が演じた長寿映画シリーズ。
全部で50作品作られた中で、丁度真ん中の25作目に当たる。しかもヒロインを演じた浅丘ルリ子は同じ役で4回も登場した。
それだけ寅さんとの名コンビということで、今回で3回目の登場。一回目はシリーズ11作「男はつらいよ寅次郎忘れな草」(1973)、二回目は15作「男はつらいよ 寅次郎相合い傘」(1975)で二作とも舞台は北海道だった。
そして三回目が沖縄である。しかもシリーズでも沖縄が登場するのは本作のみである。
何せ主人公は大の飛行機嫌い。どういう設定で無理矢理飛行機に乗せるかと苦心したかがうかがえる。なので行きは良いとしても復路では、別な笑い話が展開される。
更には沖縄で夫婦の如く同棲までする展開。しかし、何事も起きていないという話で、寅次郎童貞説まで飛び出した。
ここも山田洋次らしい設定だなと感じた。確かに寅さんはヒーローでもなく、身勝手で周囲に迷惑ばかりかける主人公だ。そして毎回美人に惚れて振られるというローテーションは変わらない。それでいて実際に手を出すスケベな設定では、これほどの長寿シリーズにはならなかったであろう。
しかし、この浅丘ルリ子は別。お互いが浮き草稼業で流れ者という寂しい身上であり、間違いなく寅さんと所帯を持ちたいと願っているヒロイン。だが、それが却って寅さんの小心さを引きだすという展開。
何ともむず痒く、妙にセンチメンタルだ。結果、沖縄という眩しい場所が登場してきても、やはりどこか極北感が漂う。歴代ヒロイン役の中では人生の負け犬なのに虚勢を張るタイプで、主人公とはウマが合うはずである。
しかし、それ故に双方の脆弱さが危機感をもたらす。つまり当然のことながらハッピーエンドとはならない。
本作は沖縄海洋博から5年後の制作で「美ら海水族館」や那覇の国際通り、本部の海などが登場してくる。他にもアメリカの戦闘機が轟音を立てて寅さんの上空を飛ぶという、政治色も加味されている。
毎回筋運びは同じなので、新鮮味はない。ただ、山田監督はシリーズを通して失われゆく日本の原風景を画面に刻むことに重きを置いているので、どの作品も日本各地の失われた風景が登場し、ノスタルジーを喚起させる。
本作でも沖縄も随分と変わったと思わせるが、それでもやはり他のシリーズ作品と見比べると原風景的印象は極端に少ない。それは制作時沖縄が本土復帰後8年経っているとはいえ、それ以前はアメリカであることも影響していると感じる。
結果、登場場面は少ないが長野県嬬恋村や軽井沢の緑豊かな原風景のロケ場面の方が抜群に印象に残るから興味深い。
しかし、本作ではどう見ても寅さんとリリーは腐れ縁の相方として絶品なんだよな。


